甲型に続く、次代の航洋駆逐艦として昭和14年の第四次軍備充実計画により建造された実験艦。

 欧米の新造艦の高速化か著しい事から、速力は甲型から4ノット増しの39ノットとし、それを実現する為に400℃、40kg/cm3の新型高温高圧缶を採用、10倍以上の排水量の扶桑型戦艦の機関(7万馬力)よりも大出力の7万5千馬力という、極めて巨大な出力を誇り、艦首も一号機雷に適合した従来のダブルカーブ型からクリッパー型に改めL/B比も見直すなど、徹底した高速化が図られ、公試に於いて日本海軍レコードの39.698ノットを記録した。(ただし、これは燃料搭載量を規定より少なくする等、他の艦より有利な条件下での記録である)

 また、雷装は当初、7連装2基が計画されたが、損害時に手動で旋回させる事が困難な事から、5連装3基となった。
 重量の都合から、予備魚雷を搭載せず、搭載雷数では特型(18本)や甲型(16本)に劣るものの、射線は片舷15射線と、重雷装艦<大井><北上>に次ぐ恐るべきものとなった。

 しかし、主砲は夕雲型と同じ兼用砲、爆雷も甲型と同等、機銃も甲型に比べ13ミリ連装機銃が1基増設されただけで対空・対潜攻撃力は貧弱で、太平洋戦争で苦戦する事になる。

 本型は昭和17年度計画で16隻の建造が予定された為、「丙型」と型名が付けられているが、戦局の悪化に伴い全艦計画中止となり、<島風>単艦となった。
 日本駆逐艦で同型艦を持たないのは、<島風>、日露戦争の戦利駆逐艦<皐月>と姉妹艦<江風>がイタリアに譲渡された<浦風>の3隻のみである。



島風(丙型)要目(新造時)

 名  称   島風(丙型)
 ネームシップ  島風
 建造時期  昭和18年5月10日
 建 造 数 1隻(計画16隻)
 基準排水量  2567トン
 全  長   129.5m
 水 線 幅   11.2m
 吃  水   4.1m
 主  機   艦本式オール・ギヤードタービン2基 
 推 進 軸 2軸
 主  缶   ロ号艦本式水管缶3基(重油専燃) 
 出  力   75000馬力
  計画速力  39ノット
 航 続 力 18ノットで6000浬
 燃料搭載量  重油635トン
 乗  員   267名
 兵  装   12.7センチ50口径連装砲 3基
  25ミリ連装機銃 2基
  13ミリ単装機銃 1基
  61センチ五連装魚雷発射管 3基