明治16年度計画と明治18年度計画により建造された中型砲艦。

 造船・運用術の大転換期にあたった為、同型艦といっても、船体の材料(<摩耶>と<鳥海>が鉄製、<愛宕>が鋼骨鉄皮、<赤城>が鋼製)、寸法、武装、機関等、さまざまな部分に大きな差違があるのが特徴。

 本型の就役後、海軍戦略も従来の「状況想定:敵艦隊は浦賀水道を北上中」といった沿岸迎撃的なものから、朝鮮半島や大陸での活動に主眼を置くようになっていき、本型のような内地警備型の砲艦は衰えていく事になる。


摩耶型の戦い:奮闘60年 〜赤城〜

 摩耶型は時代の趨勢からはやや遅れつつあったが、扱い易い艦として長く活躍した。なかでも、<赤城>は非常に62年の永きにわたり海防・海運に貢献した功労艦である。

 黄海海戦では樺山軍令部総長の座乗する仮装巡洋艦<西京丸>を護衛する別働隊として参加、<西京丸>ともども敵中に孤立するという危機に陥り、阪本艦長以下、多くの戦死者を出しながらも無事に任務を全うした。
 この奮戦は軍歌「黄海の戦」で「奮闘激戦雷を駆り電を突ん裂く赤城艦」と歌われている。

 その後、日露戦争にも参加。明治44年に廃艦となった後も川崎汽船に売却され民間で使用され、太平洋戦争を生き抜き、昭和28年に老朽により解体された。


摩耶要目(新造時)

 名  称   摩耶型
 ネームシップ  摩耶
 建造時期  明治21年1月20日〜明治23年8月20日
 建 造 数 4隻
 常備排水量  622トン
 垂線間長   46.85m(鳥海・愛宕は46.80m、赤城47m)
 水 線 幅   8.20
 吃  水   3.34m(鳥海・愛宕は3.11、赤城2.95m)
 主  機   横置2気筒2段膨張式レシプロ機械 2基
 推 進 軸 2軸
 主  缶   円缶(石炭専燃) 2基
 公試出力   614馬力(鳥海744馬力、愛宕983馬力、赤城902馬力)
 計画速力  10.25ノット
 航 続 力 −−
 燃料搭載量  石炭74トン(愛宕62トン、赤城68トン)
 乗  員   111名
 兵  装   21センチ単装砲 鳥海・愛宕1基
 15センチ単装砲 摩耶2基、鳥海・愛宕1基
 12センチ単装砲 赤城4基
 47ミリ単装速射砲 摩耶2基、赤城6基
 25ミリ4連装機砲 摩耶2基、鳥海・愛宕2基

姉妹艦:
 摩耶、鳥海、愛宕、赤城