第四師団・日露戦争(明治三十七・八年戦役)凱旋歌

 霜待つ秋

 陸軍砲兵中尉 森了一作詞
 陸軍楽長 小畠賢八郎作曲

 霜待つ秋の薄紅葉 赤き心を問われては
 散らでなかなか恥ずかしや 勝たでは止まじ敷島の

 けふ凱旋の武士(もののふ)は 葦の浪速に名も高き
 錦城師団に召されたる 近畿八州の健児なり

 頃しも五月(さつき)の末つかた 金州湾に血を流し
 南山高く日の丸の 国旗を樹てし初めより

 群がる夏の稲虫を 得利寺付近に打ち払い
 熊岳(ゆうがく)・蓋平・大石橋 海城戦も一押しに

 雨の遼陽雪の沙河(しゃか) あやめもわかたぬ黒溝台
 渾河の氷を踏み越えて 奉天城外霜の朝

 大小幾度の戦ひに 国威を世界に発揮せり
 闇に閃く発光弾 暁破るときの声

 身を焼く暑さに渇くとも 肌差す寒さに凍(こお)るとも
 仁義の楯を手にかざし 庸懲(ようちょう)の剣腰に佩き

 五條の勅諭つかの間も 忘れぬ赤誠(まこと)の一筋に
 弱肉あさる荒鷲も 翼破れて地に墜(お)ちぬ

 男子と生まれし甲斐ありて 二歳(ふたとせ)近き戦場に
 修羅の巷をゆききして 帰る今日こそ夢幻(ゆめうつつ)

 暫し忘れし故郷(ふるさと)の 千山萬水まのあたり
 花に囀(さえ)づる百鳥(ももとり)も 我が凱旋を迎ふなり

※終戦間近の明治38年9月に第四師団が凱旋歌を軍中で募集して採用された歌です。

第四師団司令部
第四師団司令部(現大阪市立博物館/大阪市)


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