艦艇の基礎知識:速力

 船の速さは軍艦も商船も「ノット」で表現します。
 1ノットは1時間に1浬の速さで、節と書く事もあります。
 ちなみに1浬は緯度1分ぶんの長さで、メートル法では1852m、海里と書いたり、シーマイルと呼ぶ事もあります。

 船の速さを測るのに使用したロープの結び目(ノット)が語源ですが、近代では、沿岸に1852m離して2本づつの棒を平行に立てて、沖から見て1本に見える点から点に移動するのにかかった時間で測定します。
 潮流や風の影響を受けるので、測定するときは行きと帰りの2回計測し、その平均を1回の測定値とします。
 これらの測定装置は日本各地に設置されていますが、沿岸を高速で航行するのは、何かと危険なので最近は電波標定を使用して1852mを得る方法(電波ログ)がとられる事があります(特に大型船)。

 艦船の「速力」は「最高速力」と「巡航速力」に分ける事もできます。
 「最高速力」はその名のとおり、燃費や機関の消耗を無視した時にその艦の出せる最高の速さ、「巡航速力」は燃費や機関の消耗を考慮して航行を行なう時の速さです。

 太平洋戦争当時の日本艦の場合、海防艦などで10ノット後半、戦艦や改造空母で20ノット台、空母や駆逐艦、巡洋艦で30ノット前半。最速は駆逐艦<島風>で39ノットでした。(最高記録は40ノットを越えているが、測定条件が特殊だった)
 巡航速力は艦種よりも建造時期と用途の影響をうけており旧式艦や護衛艦が14ないし16ノット、艦隊用の新型艦は18ノットでした。
 現用艦は機関はガスタービンなど進歩しているのですが、形状的な限界なのか、30ノット後半どまりになっており、太平洋戦争中は10ノットも出ていなかった潜水艦の水中速力の方が速くなってしまいました。

 商船は最高速力はあまり意味がなく(経済性を無視すれば、それはもう商船ではない)おおむね最高速力と巡航速力とほぼ同じで、貨客船でだいたい10ノット前半。10ノット後半が出せれば優秀商船でした。(<タイタニック>など、経済性を度外視したような客船は1920年代から20ノットでかっとんでいましたが・・)
 ちなみに、最近の商船は貨客船やフェリーでも巡航で20ノット以上を平気で出す船も多く、スター・クルーズの高速フェリー<スーパースター・エクスプレス・ランカウィ>のように、平均35ノットで世界一周48日という恐ろしい船も存在しています。


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