特設監視艇

 遠洋漁船などの小型艇を徴用・哨戒任務に就けたものが特設監視艇である。
 平たくいえば「人間レーダー」で洋上に進出して敵を発見する事を目的としているが、劣速で武装も一丁か二丁の機銃しかなく、敵艦隊を発見した場合、まず助からないという、ある種の決死兵器だった。
 本土東方の哨戒に就き「ドゥリットル東京爆撃」を探知した事で知られる第22戦隊の哨戒艇隊が知られているが、その他にも多くの根拠地隊などでも活躍している。

第二十三日東丸(日東漁業)

 昭和10年に日東漁業が建造した底引き網漁船。
 昭和16年に海軍に徴用、近海警備に従事するが昭和17年2月1日、新編の第2監視艇隊第3小隊所属艇として第五艦隊に編入され、本土東方の遠洋警備に就いた。
 昭和17年4月18日、哨戒任務を終えて釧路に向けて帰投中、本土の東800浬の海上で東京空襲に来たハルゼー機動部隊と遭遇。6時30分より約30分間接触して6通の電文を発信したが7時2分の「敵大部隊見ユ」の電文を最後に消息を絶った。(戦後、米側資料により砲撃により沈没した事が判明。軍人・軍属全員戦死)
 しかし、第二十三日東丸や長渡丸ら特設哨戒艇隊の決死の追跡もむなしく日本側の油断と対応の悪さから東京空襲に対し有効な防禦手段を打つことはできなかった。しかし、哨戒艇隊に発見された事から空襲は昼間爆撃・夜間着陸に変更、その結果、ほぼ全機が着陸を諦めるか失敗して失われており、この時戦死した特設哨戒艇隊33名の犠牲は全くの無駄でなかったとも言える。

総トン数 90トン/全長 26.52m/機関 (恐らくディーゼル)/速力 9.89ノット/兵装 7.7ミリ単装機銃1基





特設監視艇一覧(一部)
船名船主総トン数終末・備考
第二千代丸141
第三千代丸128
第八千代丸109
第三八千代丸151
第一日東丸日東漁業88
第二十三日東丸日東漁業9017.4.18 水上戦により沈没
第一海南丸89
第二海南丸87
第六海南丸81
第七海南丸84
第十五南進丸85
第十六南進丸85
第十八南進丸85
第十三南進丸85
第二十一南進丸8817.4.18 空襲により大破・自沈
第二十二南進丸88
第二十六南進丸81
第二十七南進丸83
第二十八南進丸88
第三十三南進丸86
第三十五南進丸86
第三十六南進丸81
第三十七南進丸81
第三十八南進丸80
第一膨生丸8417.4.10 除籍
第二膨生丸80
海龍丸180
第二旭丸164
第三松盛丸157
第五波涛丸155
第一福久丸152
勝栄丸152
第五福一丸150
栄吉丸150
第二太平丸143
第一大榊丸143
第二三徳丸146
海榊丸134
第五恵比寿丸東海遠洋131
第一龍重丸131
第二海鳳丸121
第八日之出丸118
長久丸11817.4.18 空襲により大破・自沈
第五笹山丸116
第八住吉丸116
第五千秋丸103
国宮丸104
楡林丸99
呂栄丸99
玉田丸99
栄福丸98
第二天神丸9617.4.10 除籍
第七明神丸96
第一岩手丸9517.4.18 空襲により大破・自沈
第十七長運丸95
長渡丸9417.4.18 水上戦により沈没
第三福吉丸92
新洋丸92
第六朝洋丸91
高城丸91
日向丸83
第二明治丸80
高貴丸80
富士丸80
瑞穂丸80
喜洋丸80
大紀丸79
第三昭和丸76
第一紀賽丸74
第三朝洋丸74
第十振興丸72
第二号八幡丸3917.4.10 除籍
紀洋丸3817.4.10 除籍
第五濱栄丸?
第五進取丸?
海晃丸?
雄勝丸?
第二月浦丸?
福長丸?
第二号天神丸?
第十二号八龍丸?

※本表は昭和17年2月25日および4月1日の第22戦隊の編成表から作成したもので、それ以前に除籍となった艇やそれ以後に徴用・配属された艇、および各根拠地に配属された特設監視艇は含まれていない。
※今回、ほとんど空欄となった船主や終末、および第22戦隊以外の哨戒艇についても機会があれば調査したい。