<すいせん>は日本海の北海道と本州を結ぶ航路に大型フェリーを就役させている新日本海フェリーが96年に就役させた大型高速フェリーです。
大型旅客フェリーとしては我が国最速の29.4ノットの高速を誇り、それまで28時間かかっていた敦賀−小樽航路を21時間に短縮しました。たった7時間というなかれ、28時間だと毎日定時に出港という形にするなら3隻必要ですが、21時間なら2隻で運航が可能になり、非常に大きな効果があるのです。
従来船の3倍近い大出力エンジンを搭載、軽金属を多用して軽量化を図る一方で法律いっぱいの長い船体を採用、さらにランプウェイを船尾のみとして船首に荷役装置を設けなかった為、非常にスマートで美しい船体となり、日本造船学会が技術・芸術両面に優れた船を顕彰する「 Ship of the Year'96 」にも選ばれました。(ただ、この賞を貰った客船5隻のうち3隻が航路撤収とか会社倒産とかで滅んでいるという、少々複雑な賞ではあるのですが・・)
船名 | すいせん |
総トン数 | 17329トン |
積載重量 | 5440トン(乗用車80台、トラック122台) |
旅客定員 | 507名(スイート8名 特等40名 一等213名 二等214名 ドライバー32名) |
長さ | 199.45m |
幅 | 25.0m |
深さ | 14.8 |
喫水 | 7.23m |
機関 | ディーゼル 23830kwx2 |
航海速力 | 29.4ノット |
就役 | 1996年6月11日 |
航路 | 新日本海フェリー敦賀=小樽航路(月〜土の毎日運航) |
建造 | 石川島播磨重工 |
姉妹船 | すずらん |
以下では旅客区画の設備について紹介します。
乗船口から入って最初にあるのがエントランスホール。だいたいの客船や旅客フェリーはエントランスホールはゴージャスに作る傾向があり、<すいせん>のエントランスも立派なものです。
もっとも、所詮はフェリーですから、TVの前でおっさんがビール片手の情けないかっこうで居眠りしてたり、ガキが階段でカードゲームに興じてたりと、その程度のもんですが・・
入って直ぐが案内所。写真では見えませんが写真の右端外側です。ホテルでいう所のフロントですね。
その隣、写真の右端に見ているのが売店。お酒や飲み物、おつまみや北海道のお土産などが売られています。ハスカップ飲料や白い恋人ドリンクのような変な物もありました。
また、新日本海フェリーオリジナルのグッズや絵葉書なんかもあります。
左側、階段の裏側にはTVとイス、テーブルが置いてあって寛げるようになっています。
左舷側の廊下を船尾方向に進むと展望大浴場。我が国最大・最高グレードの豪華客船<飛鳥>から、全食自動販売機食のカジュアルフェリー<おーしゃん・のーす>まで、我が国の長距離客船にはほとんど装備されている大浴場ですが、<すいせん>にも当然の如く装備されています。
で、浴室。洗い場が7つと、街の風呂屋の浴槽程度のやつが1個。1万7千総トンの船としては小さめな気もしますが、<すいせん>はサイズに比べて定員が少ないですから、こんなもんなのかもしれません。
風呂の先は車輛甲板。航海中は閉鎖されます。
戻って右舷側船尾方向はドライバーデッキ。トラックの運ちゃん専用の区画で一般乗客には縁の無い所。船によっては風呂や食堂は時間交代で使用するのですが、<すいせん>は風呂や食堂もドライバーデッキに専用のものがあります。
エントランスの前方は客室区画。このデッキは海側が一等個室、内側が二等寝台と二等和室になっています。
二等和室というのは、いわゆる「雑魚寝部屋」。決められた位置に毛布を敷いて雑魚寝です。
二等寝台は寝台車のベッドを想像してもらえれば早いと思います。雑魚寝と違い、寝台がしっかりしているので、船酔いする人には普通のベッドの特等よりも都合が良いとも言われています。
一等個室は二段ベッドを入れた4人部屋と普通のシングルベッドの2人部屋、畳敷きの和室があります。4人部屋は二等寝台と大して変わらない気もしますが、グループ旅行や家族連れなんかにはいいかもしれません。いずれもバス・トイレ無しです。
客室区画を抜けて最前部がフォワードサロン。ブリッジの真下にあり、前に開いた窓から進行方向が一望できる素敵なサロン・・・の筈なんですが、前方の窓には目隠しがしてありました。何ででしょう?
まあ、どうせ沖合いの航路なので、水平線しか見えませんから、前から見ようが横から見ようが大差はないんですが・・
エントランスから階段を上がると(エレベータでもいいけど)、4F・Bデッキ。
前方は海側は一等船室になっています。
内側は左舷側がチルドレンルーム。要するに子供用の遊具が置かれた部屋です。右舷側はビデオルーム。部屋にテレビの無い二等やビデオ貸し出しサービスを受けられない一等合部屋の乗客用のサービスでビデオ付きテレビの置かれた小部屋が3部屋ほどあります。なんだか、風俗系のお店のようですが、その類のビデオは貸し出していないようです(笑)
その奥はゲームセンター。置いてあったのはゼビウス3D、ストライカーズ1945II、ダンシングアイ、ギャルズパニック4、ホットギミック快楽天、ぷよぷよ、ダライアス、麻雀同級生、マイエンジェル2、アウトランダーズ、脱衣麻雀、脱衣花札、脱衣スロット。なんだか妙な偏向を感じるのは気のせいでしょうか?
流石にメンテナンスは良くないようでゼビウス3Dのボタンが少々効きにくいようでした。
後方は公室区画。右舷側はまずレストラン。欲しい料理を取って清算するカフェテリア方式。フェリーのレストランとしては味も値段も、まあまあな方だと思います。量は十分あります。
横はプロムナード。窓に面した部分にテーブルとイスが置いてあり、日本海を眺めながら休憩したり、食事をしたりする事ができます。
レストラン後方にはカフェテラス。喫茶&軽食スペースでレストランの営業時間より若干長いこと営業しているので便利です。
レストラン&カフェテラスを抜けると後部デッキ。<すいせん>は高速船のためデッキにでるのが制限されていてプロムナードも室内にあるので航行中に外気にあたれるのはここ、後部デッキだけです。
夏場はテーブルを出して簡易ビアホールにでもするような雰囲気でした。
写真の真中に映っているのはジャグジー。写真では見えませんがサウナもあるのですが、使っている人は見かけませんでした。
左舷側から戻るとスポーツルーム。といっても、ジムがある訳ではなく、卓球台が2台あるだけでした。
さらに戻ると右舷側と同じくプロムナード。内側は予約制のレストラン(グリル)になっていました。
階段を上がるとビデオシアター。液晶プロジェクターを使った42人収容のミニ映画館。残念ながら白は浮いてる黒は沈んでる画面は台形と「やる気あるんかね?」という酷い状態でした。
客室区画は特等とスイート。この階だけ絨毯が違ってました。
このデッキはエントランスより後方部分は無く、中央部分が特等、その前がスイート、さらにその前(もちろん立ち入り禁止)がブリッジになっています。
特等ってのはバス・トイレ付きのツインで、ちょっと豪華なビジネスホテルってトコでしょうか。和室もあります。
こちらはスイートルーム。むちゃくちゃ広いです。
装備はシングルベッドx2(写真ではダブるのようですが、実際はシングルが2個くっついています)、5人ぐらい座れそうなソファーセット、大型TV&ビデオ、バス・トイレ(ユニットではなく、ちゃんと別室になっている)、湯沸しポット、冷蔵庫(ドリンク3本付き)など。
高い料金(2人使用で66000円)とるだけあって、すばらしく快適な部屋です。