[Back]

 菊水作戦?  
5/25
大阪→菊水山→鵯越→元町→尼崎→大阪


 いわゆる「趣味の世界」において、「鉄道」というのは特に長い歴史と強い勢力を誇っていますが、裾野が広い分、いろんなものを有難がる人がいます。そんな中に「秘境駅」といって、「なんでこんな所に駅を作ったんだ?」と思わず言ってしまうようなとんでもない場所にある駅を重んじる人達がいるのですが、関西、それも割と交通の便のいい場所になかなか凄い駅がある、ってのを聞いたのでちょっと出かけてみました。
 今回の目的地は「菊水山駅」、したがって菊水作戦な訳です(ォ
  ↑でも、菊水山の菊水と菊水作戦の菊水は同じ物のはずですけどね。


菊水山駅(新開地方面)  
菊水山駅(新開地方面を望む)。本当に何もありません。
菊水山駅(鈴蘭台方面)  
菊水山駅(鈴蘭台方面)。全く何もありません
和室  
菊水山駅前。この階段が上の写真の右端の部分に繋がっています。

 菊水山駅は神戸電鉄の駅です。神戸電鉄は神戸市街の新開地(新開地〜湊川は正しくは神戸高速鉄道)と六甲山の裏側の粟生や三田を結ぶ鉄道で、沿線には有馬温泉などがあります。路線図で見れば何てこと無い都市郊外のローカル私鉄(路線長だけみれば大手私鉄に分類されている阪神より長いんですけどね)ですが、実際は六甲山を越えたり山中を走ったりする鉄道で、乗り心地の悪さも手伝って「神戸登山電鉄」なんて言う人もいます。

 阪急や阪神、山陽との接続駅である新開地からわずか5駅、10分で菊水山駅に到着。なるほど、神戸市北区というのが信じられないぐらいの山ん中です。
 降りたのは私1人だけ。車掌さんが降りてきて切符を回収。神戸電鉄は無人駅も含めてスルッと関西に対応していますが、この駅だけは例外だそうです。
 この駅のある新開地−鈴蘭台は割と列車の本数の多い区間で昼間でも6、7分毎ぐらいに電車が運転されているのですが、この駅は普通電車も通過するものが多く、停車するのは朝夕を除けば1時間に1〜2本程度です。(それでも秘境駅としては相当多い部類に入りますが)

 駅にはホームの他は若干の屋根とベンチ、駅名板と向かいのホームに渡る為の踏切があるだけで他に設備はなし。当然ながら無人駅です。
 周りを見まわしても山、山、山。下水施設や砂防ダム、バイパスなんかは見えていますが、人の生活が感じられるものは存在しません。

 駅から出ると・・・下の方に続く細長ーーーい階段。それが終ると舗装された道路に出てダムの工事現場と下水処理施設に繋がっていて、近くには神戸市の水環境センターやポンプ場がありますが、この駅の周辺の整備状況や普通電車もバンバン通過していく事から察するに、そこで働く人達はあまり鉄道は使ってないんじゃないですかね・・・では、なんでこの駅が存続しているかというと・・・実はここ、六甲山縦走コースの一部になってまして、すぐ先は難所の菊水山越えです。つまり、菊水山に挑んで力尽きた人や、途中を省略して菊水山にアタックする人の為という目的もあるようです。


分岐  
山道  
地蔵堂  
砂防ダム  
菊水山から鵯越に向かう道の風景色々

 ここまできて、そのまま帰るというのも芸がないので次の駅まで歩くことにします。当然、菊水山を越えて鈴蘭台駅に向かう体力なんて無いので、下りの鵯越駅を目指します(笑)

 まず駅前にあるのが下水処理施設。山の中には不釣合いなぐらい立派な施設で、なんだか秘密工場みたいな感じです。
 駅の階段を降りたあたりから下水処理施設の周辺の道は状態が良く、比較的傾斜がきつい事を除けばいい感じの道です。途中、砂防ダムがあったり謎の地蔵堂(昭和28年9月22日の日付の入った鳥原地蔵尊という名前と修理の寄付をした人の名前が書いた看板がありましたが縁起の類はかかれていませんでした。お賽銭箱は神社方式みたいだったし、いったい何なんでしょう?)があります。

 舗装された道路をさらに進むと道路と縦走路の分岐点。ここからは山道になります。ちなみに、道路をそのまま進むと鳥原貯水池に出るらしいです。
 山道は割ときちんとしている方ですが、一部に階段が崩れて急傾斜になっている部分や、路面の状態が悪い部分があって、歩き易い靴でないとツライかな、という程度です。
 未舗装の山中の道を歩いていくと、小川(溝にちかい)にかかる木製の橋があったりしてかなり山の中って感じがしますが、直線距離で1kmも行けば市街に出れるような位置にあり(というか、ここも神戸市)、PHSだって圏内だったりします。

 眼下に民家が見えるようになり、鵯越が近づいてくると路端の一部が石垣になっている個所がありました。「何だこりゃ?」と思いつつさらに進むと曰くありげな石灯籠までありましたが説明板の類はありませんでした。何なんでしょうか?
 さらに進むと、道が広がってすこし広場みたいになっている場所に出ます。そこには滑り台などの遊具がありました。くたびれてはいましたが、朽ちている訳でもなさそうだし、薄暗い山道に遊具って、なんだかシュールな光景です。
 不審に思いつつさらに進むと・・鵯越駅の裏側でした。なるほど、あれは駅そばの公園でしたか。

 約30分で鵯越到着。源義経の「鹿も四足、馬も四足〜」の「鵯越の逆落し」で知られる場所です。(ただし、これには異説があり、義経が駆け下りたのはもっと東側、須磨公園のあたりだという説もあります)
 しかし、この逆落し、成功したから義経は軍事的天才になりましたが、転がり落ちて終っていたら「馬と鹿の区別もつかなかった文字通りの馬鹿」として歴史に名をとどめたか、あるいは八甲田山で遭難した歩兵第5連隊(青森)の事例とならぶ「現地の人の言う事はちゃんと聞こう」の代表例になってたことでしょう。

あま湯ハウス  
尼崎駅前の温泉施設「あま湯ハウス」

 小旅行といえど温泉は押さえておきたい。神戸電鉄でそのまま六甲山を越えて、有馬や宝塚まで進むという手もありましたが、昼食は神戸の中華街で食べたかったので、経路上の温泉という事で尼崎の「あま湯ハウス」に行って見ることにしました。
 「あま湯ハウス」はJR尼崎駅から徒歩3分という好立地の健康ランド型の温泉ですが、駅から近すぎて見落としてしまい、30分ぐらいあたりをさまよい、諦めて帰ろうとしたときに発見しました。本当に駅の近くです。

 入泉料は1900円と高い目ですが、館内衣(浴衣かアロハを選択可能)の貸出しがあり、また人手が多く各種施設のコンデションが良いので、それほど高いという印象は受けませんでした。もともと普通の健康ランドだった所に温泉を掘り当てた為か、温泉一辺倒ではなく、バイオ水(人工温泉?)を使ったジャグジーやら檜風呂、薬湯、ハーブの香りのスチームサウナや塩サウナなど温泉以外のお風呂も充実しています。
 温泉は褐色の強塩泉で有馬温泉のものに近いとの事。露天風呂と内湯の中規模な浴槽のみが温泉になっていますが、内湯はガラスのパネルで他と仕切られており、また露天風呂のフチや柱にはこれでもかってぐらい析出物がついている所をみると、結構濃い温泉なんでしょうかね。
 元が健康ランドなので食事などの周辺施設も充実、ビアハウス、普通の食事、ファーストフードなど各種あり、ゲームセンターやマッサージ、仮眠設備なんかもあります。

 この日は少々気温が高く、山道を歩いたり、中華街で水餃子やラーメンと格闘したせいで少々汗をかいていたのですが、お風呂でさっぱり。その後、仮眠室で休憩していたら本格的に寝入ってしまいかけて危ないところでした。
 しかし、こういうところって分煙できんもんでしょうか。わたしはそれほど苦にはならないんのですが、ゆっくり休んでいる所でとなりでプカプカ吸われるとやっぱり気分が悪いです。

 一休みして元気の回復したところで帰阪。突発的な半日旅行でしたが「自然を満喫」「美味しいものを食べる」「温泉でゆったり」などツボはしっかり押さえられた満足のいくものでした。