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 洛北暑中行軍
7/24
京橋→貴船口→貴船神社→アソガ谷→貴船口→京橋


 小旅行したい気分になったのと、京都を舞台にしたギャルゲー「Lost Passage」の影響が少々、夏コミに向けての調整(暑さ慣れ)の意味も兼ねてなんとなく洛北に行ってきました。

 「敵は45℃の酷暑、汗が熱気で舞い上がり雲を成す中で、なお戦い続ける術を習得しているおたく達である」「暑さとは何か、日差しとは何なのか、その真実の姿を提示してもらいたい」などと馬鹿な事を考えつつ、一路京都へ・・・

貴船口  
貴船口。アスファルトとはいえ、気持ちのいい道ですが、如何せん車が多すぎます・・
貴船の清流  
蛍岩のあたりの貴船の清流。
天の岩舟  
天の磐船。貴船の山中で見つかったものとか
船形石  
このアングルでは石垣にしか見えませんが船形石
貴船川起点  
貴船川の起点。行政上のもので、実際はもっと上流があります。
山道  
貴船川にそって続く山道。アソガ谷林道というそうです。
一応、轍はありますが、道の真ん中に蛙が出たり蛇の抜け殻があったりしました。

 大阪から洛北へは京阪特急が便利なので、いったん京橋まで戻り、京橋から出町柳行きの特急に乗車。京阪特急は特急料金不要のものとしては最高級とも言われていて、転換クロスシートなのはもちろん、テレビやダブルデッカーなどの大技の他、シートピッチを大きくしたり、シート下の空洞を作って脚を伸ばせるようにするなど細かい気配りも充分で非常に快適です。

 終点・出町柳で叡山電鉄に乗り換え。叡電というと子供の頃に来たっきりだったので、ちんちん電車の親玉みたいなイメージでしたが、出町柳の駅に停まっている派手な塗装で窓が大きく、椅子が外側を向いた、えらく観光地っぽい電車がいます。後で聞いた所によるとパノラミック電車「きらら」という、お米のような名前の車両でした。

 土曜日という事で結構混んでいて座れず。他に何かある訳でもないから、みなさん貴船か鞍馬行きですか・・くそ暑い中、物好きも多いもんです。
 電車で約20分、貴船口に到着。ここからバスも出てますが、今回は歩くのが目的だから当然歩きで貴船神社を目指します。
 道はゆるい上り坂。上に貴船の森(水源の森)、下に貴船川。アスファルトの道なので暑い事は暑いですが、都会のジリジリと焼けるような暑さではなく、気持ちの良い暑さです。ただ、大型バスや乗用車など、交通量が多いのが難点。このぐらい自分の足で歩け。

 20分ほど歩くと貴船神社の二の鳥居に到着(一の鳥居は貴船口駅の手前にあります)。有名な赤灯篭の参道の階段を上ると本宮。反正天皇の頃まで遡る非常に古い神社で全国に500ある貴船社の本宮ですが、上賀茂神社の摂社であった時期が長かったせいか、巨大な建物はなく、どっちかといえばこじんまりした感じがします。
 貴船神社の御祭神はタカオカミ、降雨をつかさどる水神でいわゆる龍神とされる事もあります。イザナギがホノカグツチを切り殺した際に産まれたとされ、クラオカミとも言います。(貴船神社は同一として祭っていますが、区別して祭る神社もあります)
 その他、末社にイハナガヒメ(短命起源説話で知られる不老長生の女神。コノハナノサクヤビメの姉)、コノハナノサクヤヒメ (桜の化身であり火山鎮護の女神でもある。天皇家の先祖)、サルタヒコ(降臨した天孫を出迎えた国津神)など伊勢系の神々を祭っていますが、「荒御霊」として出雲系のオオクニヌシ(スサノオの娘婿。国津神の筆頭)、スクナヒコナ(オオクニヌシとともに国土経営を行った小人神)も祭られています。

 貴船神社は祈雨と縁結びで有名な神社で、他に航海安全が転じて交通安全なんかが担当ですが、五寸釘とわら人形の丑の刻参りでも有名で少し前に大流行した阿倍清明の説話にも貴船に祈願して鬼となる女の話(鉄輪伝説)があります。もともと、川という両面性(洪水や渇水を起こしやすい)を持ちやすいものを祭っている上に祭神にいわゆる「祟り神」がある事、心願成就の法が深夜の参拝(丑の刻)だった事、物語等で有名になってしまった事などが混ざって呪詛神としての評価が一人歩きしてしまい、心願成就法が呪殺法に転じてしまったようです。

 本宮に参拝後、またゆるい上り坂を登ると結社。古式では先に奥宮を参る事になっているようですが、特に拘らずに参る事に。
 結社の祭神は短命起源説話で知られるイハナガヒメ。妹のコノハナノサクヤヒメと共に天孫ニニギに奉げられますが、天孫は長生と普遍の象徴であるイハナガヒメを退け、短命と栄華の象徴であるコノハナノサクヤヒメのみを召した為、人の命は咲く花の如く儚いものになったというもので、「長生と栄華を選択させて栄華を取った為に人は短命になった」という、このタイプの短命起源説話は東南アジアに広くみられるそうです。
 当のイハナガヒメはニニギに袖にされた訳ですが、どういう訳が縁結びの神様として古くから知られており、あの紫式部も夫の愛情を繋ぎとめる為に貴船に参った事が記録されています。
 この結社は境内のススキなどの葉を互いに結び合わせて祈願すると縁結びの願いが叶うとされていますが、神社を丸坊主にされたり、あちこちを結び目だらけにされては困るので、現在では紙製の結び文を結び処に結ぶ事になっています。
 結社の隣には船の形をした岩「天の磐船」があります。なんだか上古に遡る縁起がありそうですが、実は貴船山中で発見され平成8年に奉納された最近のものです。

 さらに上ると思ひ川。縁結びの神社で思ひ川とはロマンチックですが、この先の奥宮が本宮だった時代に禊を行った「御物忌(おものいみ)川」が訛ったものらしいです。
 思ひ川橋を渡れば奥宮の参道の杉並木。かつての本宮で貴船神社の真髄ともいうべき社であり、ついでにいうと五寸釘の名所でもあるのですが、すぐ横が道路になっていて、しかも近くに駐車場があって車や人の通りが多く情緒もへったくれもありません。やっぱり冬に来るべきかなぁ・・
 奥宮。かつての本宮。水害に遭うので本宮は現在の位置に引っ越しましたが、貴船神社の縁起となっている玉依姫の至った地で、社の横にはその時の船を石を積んで隠した船形石と呼ばれる石積みもあります。
 また、奥宮の社の下は龍穴になっているとの事ですが、神聖な物なので参観は不可です。社の隣に「権地」という看板と清められた一角があり、その時は「なんだろう?」と思いましたが、なんでも奥宮の社を修理する時に、社の権地の反対側に薦を付けて、社を権地まで引き移す事で龍穴を隠したとの事。
 船形岩の小石は航海安全のお守りという事。貴船神社のHPでも持ち帰りを禁止してなかった(「程々に」という表現だった)ので、貰って帰る事にします。

 奥宮とその隣の駐車場を過ぎると急に人通りが減っていい雰囲気に。ここで鞍馬寺の木の根道と旧花背峠に至る道を混同してしまい(どっちも鞍馬に到達できる事はできます)、軽い気持ちで貴船川にそってずんずん進んでしまいました。
 なにせ、鞍馬寺の道と混同していますから「カップルやグループに最適」という割にはきつい道だなぁ・・なんかへんだなぁ・・などと思いつつ、山道をぐりぐり進む。途中、道の真ん中に蜘蛛が巣を作っていたり、でっかい蛇の抜け殻が落ちていたりで非常に困惑し、「絶対に違う。一人だし、地図も無いし、これ以上は行かない方が良い」と撤退を決意したのが約一時間後。実はもう少し進めば花背峠に出れたようですが、その時は変だとしか判ってないから本当に不安でした。まあ、未舗装の登り坂とはいえ、道のコンデションはそれなりに良く、貴船の清流と静かな山道は充分エネルギー補充にはなりましたけどね。
 途中、水が湧き出ている所があったので一休みして水を飲んでみましたが、なんと冷たくて美味しい事か。「やはり自然は偉大だ」などと余韻に浸りつつ山を降りて貴船神社に到達。

 その後、下から鞍馬に再アタックする事も考えましたが、迷って引き返した事で精神的にも疲れてたので次の機会に回す事にして引き上げる事にしました。
 貴船口まで戻り、そこから叡電、出町柳から京阪と来たコースの逆ルートをたどります。
 帰りの叡電は「きらら」ではありませんでしたが、なにやら車体に絵が描いてある「エコモーション号」なる車両で、車内はミニギャラリーになっていて、吊広告のある場所を使って写真展をやっていました。叡電っていろいろやってるなぁ・・

 出町柳からは京阪特急。ホームにでると・・あれ?これは8000系じゃない・・もしかして一編成しか残っていない3000系なのか?3000系は昭和48年建造の古い車体ですが、徹底的に改造されていて特にダブルデッカーの1階席は1x2の独立肘掛付のシートに加え、スポット空調や読書灯まで装備してあり、特急料金はおろかグリーン料金だって払っても惜しくは無いというデラックスな車両なのです。  ところが、この車両、椅子が転換式ではなく集団離反式といって車両の中央で前向きと後向きが固定されている方式をとっており、半分は進行方向後向きに座る事になります。私はあんまり電車で酔う事はないのですが、京阪カーブ式会社などと揶揄されるような線で逆向きには座りたくはないなぁ・・などとおもいながらも一応は行ってみると、進行方向向きの1人掛けがあいていたので喜んで着席。うーん、やっぱりいいなぁ・・

 さて、京阪特急は京都郊外の中書島を出ると京橋まで停まりません。私の家は京橋の少し手前なので本当は特急では具合が悪いのですが、急行はロングシートだし(セミクロスの車両もあるらしい)、昼間でも混んでいる事が多いので京橋で折り返す事に。
 まったく個人的で勝手な話ですが、私の家は京阪沿線なんですが、京阪には好嫌相半する思いがあります。なぜなら、家の最寄り駅の周辺6駅は全ての優等列車が通過するという、少々納得いかない事になっているからです。区間急行なんぞは全区間のうち、駅を通過するのはその6駅だけという、京阪は土居−野江間の住民に何か含む所でもあるのか?なんて思いたくもなります。そいではと京橋から折り返すと、しっかり金とられます。いや、乗った分を払うのは当然ですが、初乗りを取るという根性が気に入らない・・・それだったら、せめて森小路に準急を停めい。(森小路は6駅の中では唯一、複々線の内側車線にもホームがある)

 京橋に到着。納得いきませんが、ルールはルールなので、ここでいったん改札を出て折り返し。そのまま折り返すと、なんだかもったいない気がしたので京橋駅下の京阪モールに寄っていく事に。
 京阪モールといえばコカルド。京橋駅付近の本店と京阪モール内に出店&カフェのある京橋ローカルの洋菓子屋ですが、メイド服(のような制服)のお店としても一部で妙な人気を集めており、わざわざ遠方から訪れる人もいるようです。ここの制服は白を基調にしたもので「白メイドさん」として有名だったのですが、最近は本店、京阪モール店とも黒ベースの普通の(?)メイド服になっていました。夏服ですかね?それともモデルチェンジですかね。
 まあ、制服は置いておいて、ここのシュークリームは最近流行のパイ皮のさくさく感のあるタイプですが、クリームにラム酒が効いてて、とても美味しいです。他にはフルーツ系のケーキなんかが美味しいようです。
 京阪モールでコカルド以上にお勧めなのは大寅。いや、制服とかそんなんじゃなくて、純粋に食べ物の話ですよ? ここの「魚しゅうまい」はその名の通り魚のすり身を使ったしゅうまいですが、非常に美味しいお勧めの逸品です。
 おいしいもの買って少なくとも150円(京阪の初乗り分)ぐらいは満足したので帰宅。

 さて、次は本番、東京遠征!