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噴進機関訪問記

  
今回は大阪市弁天町の交通科学館に化学式ロケットエンジンを訪ねました。
 残念ながら、我が「特呂二号」ではなく、そのモデルとなった友邦ドイツの「Walter HWK-509A-2r」です。

 「HWK-509A-2r」は、水化ヒドラジンとメタノールの混合液と過酸化水素を化学反応させて生じたガスを噴射して推力を得る液体ロケットエンジン(ロケットモータ)で、推力は1700kg。第二次大戦の実用機では最速の局地戦闘機Me163B「コメート」に搭載されました。
 このエンジンはワルター博士が考案した事から、ワルターエンジンと呼ばれますが、後にアポロ計画で名を馳せるウェルナー・フォン・ブラウン博士やデルタ翼の祖アレクサンダー・リピッシュ博士らも関係している、まさにドイツの頭脳の結晶というべき代物です。


 我が国も昭和18年に2000万マルクで製造権を取得。
 エンジンや設計図はWW2有数のエースサブマリナーである木梨鷹一中佐の率いる<伊29>が連合軍の追撃を受けながらも、シンガポールまで運ぶ事に成功しました。
 シンガポールでリスク分散の為に技術者と資料の一部を降ろした伊29潜は日本をめざしましたが、バシー海峡で米潜の待ち伏せを受けて敢え無い最後を遂げてしまいました。
 しかし、シンガポールで降りた技術者と資料は空路、日本に到着。記憶を頼りに不眠不休の努力を重ねロケットモーター特呂二号とJ8M1「秋水」の開発に成功しましたが、実用化の前に終戦となりました。(秋水は昭和20年7月7日初飛行)

 某Aの小説に潜水艦の夢の機関としてワルターエンジンが登場します。
 しかし、たしかにワルター機関は酸素を必要としない機関ですが、恐ろしく燃料を喰う(秋水は1回8分の飛行で2tの燃料を消費した)ので、潜水艦の巡航機関としてはとてもじゃないが使えないとは思うのですが・・(戦闘時のブーストならともかく)


交通科学博物館

 大阪市港区波除3丁目(電話:06-581-5771)
 10:00〜17:30(入場は17:00)
 休館日は毎週月曜日(祝日および春・夏休みは開館)と年末年始
 JR大阪環状線のJR弁天町駅下車すぐ(というか、駅の真下)

 基本的に鉄道関係の博物館でD51やC62等が展示されています。
 客層としては家族連れが多いのですが、展示そのものはしっかりしています。また、221系シミュレータ(「電車でGo!」の親玉みたいなもの)など面白いものもあります。

 軍事系の展示は飛行機のエンジンを除いてほとんど無いので注意しましょう。(西郷従道の事や南満州鉄道の事ぐらいあってもバチは当たらないと思うのだが・・)