昭和9年、初春・白露型の失敗と、軍縮条約の失効を見越し、再び特型クラスの大型駆逐艦の建造が決定された。これが朝潮型である。

 特型に比べ、備砲は同等で魚雷発射管が三連装三基から四連装二基に変更され、同時射線および装雷数は減少したものの酸素魚雷(一部の特型は酸素魚雷を搭載した)と次発装填装置の採用で雷撃力は向上したといって差し支えない。

 復元性や船体強度は当然の如く強化されており、航続距離が過小である事を除けば、ほぼ日本海軍の追い求めた駆逐艦であり、そのスタイルは「日本艦隊駆逐艦の精華」である甲型に引き継がれていく。

 完成直後、高速時旋回時に横滑りを起こし、旋回半径が異様に大きくなる欠点が現れたが、続く陽炎型用に開発の進められていた新型舵とナックル付きの艦尾を採用する事で旋回半径は通常となり、速度も多少上昇した。

 朝潮型は全10隻が建造され、太平洋戦争では常に一線で戦い、全艦が戦没した。


朝潮型の戦い:臨機調事件  〜朝潮〜

 演習中、<朝潮>のタービンブレードが折損。他の新型タービン搭載艦でも折損やクラックが多発し、「すわ、構造的欠陥か?」と大騒ぎになり、臨時機関調査会が設けられた。
 幸い、原因はタービンの共振と判別し、対策がなされて事件は解決した。しかし、昭和7年の<早蕨>遭難事件から5年ほど、大きな事件が相次いで日本海軍を襲い、不幸を一身に背負ったというような状態に陥っていた。(ただし、真の不幸はさらに5年後に訪れるのだが・・)



朝潮型要目(新造時)

 名  称   朝潮型
 ネームシップ  朝潮
 建造時期  昭和12年8月31日〜昭和14年6月28日
 建 造 数 10隻
 基準排水量  2000トン
 全  長   118.0m
 水 線 幅   10.4m
 吃  水   3.7m
 主  機   艦本式オール・ギヤードタービン2基 
 推 進 軸 2軸
 主  缶   ロ号艦本式水管缶3基(重油専燃) 
 出  力   50000馬力
  計画速力  35ノット
 航 続 力 18ノットで4000浬
 燃料搭載量  重油580トン
 乗  員   229名
 兵  装   12.7センチ50口径連装砲 3基
  25ミリ単装機銃 2基
  61センチ四連装魚雷発射管(次発装填装置付) 2基