大正4年に計画された八八艦隊計画の第1段階構想である、山城型、伊勢型に対応する大型航洋駆逐艦。

 海風型の後継艦で、備砲は8センチ砲を廃し、12センチ砲で統一、魚雷発射管の連装から3連装とし、砲撃力・雷撃力ともに大きく向上している。

 機関は実用試験を兼ね、<磯風><濱風>にパーソンズ式タービンを、<天津風><時津風>にはブラウン・カーチス式タービンを搭載、いずれも巡航タービンを採用した3軸推進機関で27000馬力で34ノットの高速を誇り、航続距離も念願の3000浬を実現したが依然、信頼性に乏しく、長時間運転時の出力は7000馬力に制限されていた。

 この時期、三本の煙突の太さがそれぞれ異なっているが、これは第一煙突が小型の混燃缶2基、第二煙突が専燃缶1基、第三煙突が専燃缶2基用とした為で、この奇妙な配置により12センチ砲と魚雷発射管すべてが中心線上に配置する事が可能となり、美しくはないが、戦闘力は大幅に向上している。

 この型では、日本駆逐艦で唯一、縦通式構造を採用しているが、重量軽減の利点より工作が複雑になる欠点の方が目立ち、以降の艦では横式構造に戻っている。




磯風型の戦い:復活? 〜時津風〜

 磯風型4番艦<時津風>は大正7年3月30日、宮崎県の海岸で座礁、大破放棄されたが、備品などを陸揚げし、再建造され大正9年に再竣工している。
 船体が放棄されているのだから、本来は新造なのであるが、修理費で予算を獲得した為、同じ艦として再就役する事になった。



磯風型要目(新造時)

 名  称   磯風型
 ネームシップ  磯風
 建造時期  大正6年2月28日〜大正9年2月17日
 建 造 数 4隻(実質5隻)
 基準排水量  1105トン
 全  長   99.5m
 水 線 幅   8.5m
 吃  水   2.8m
 主  機   パーソンズ式(<天津風><時津風>はブラウン・カーチス式)直結タービン3基 
 推 進 軸 3軸
 主  缶   ロ号艦本式水管缶5基(重油専燃3基・石炭混燃2基) 
 出  力   27000馬力
  計画速力  34ノット
 航 続 力 14ノットで3000浬
 燃料搭載量  石炭147トン 重油297トン
 乗  員   145名
 兵  装   12センチ40口径単装砲 4基
  6.5ミリ単装機銃 2基
  45センチ連装魚雷発射管 3基



磯風型の航跡

磯風 Isokaze
大正6年2月28日、呉工廠にて竣工、一等駆逐艦に類別
昭和10年4月1日、除籍

濱風 Hamakaze
大正6年3月28日、三菱長崎造船所にて竣工、一等駆逐艦に類別
昭和10年4月1日、除籍

天津風 Amatsukaze
大正6年4月14日、呉工廠にて竣工、一等駆逐艦に類別
昭和10年4月1日、除籍

時津風 Tokitsukaze
大正6年5月31日、川崎造船所にて竣工、一等駆逐艦に類別
大正7年3月30日、宮崎沖にて座礁放棄
大正9年2月17日、舞鶴工廠にて竣工
昭和10年4月1日、除籍、戦後解体