海風型とともに計画された中型駆逐艦。海風型のような大型駆逐艦のみで水雷戦隊を編成するのは予算の都合上、不可能であった為、本型のような中型駆逐艦が建造される事になった。

 この時期、海風型や浦風型など大型駆逐艦で革新技術的な冒険を行う一方で、中型駆逐艦は極めて堅実な設計となっている点が興味深い。

 大型駆逐艦は第二水雷戦隊を編成し、巡洋艦/巡洋戦艦部隊とともに前進、夜襲を実施する任務を帯び、中型駆逐艦は第一水雷戦隊として戦艦部隊に随伴し、これを護衛、艦隊決戦時の水雷突撃の任務を帯びていた。

 その為、倍近い排水量を持つ海風型と比べて、雷装で同等(竣工時点なら優越)、砲熕装備は12センチ、8センチともに各1門を減じただけの極端な重武装艦であった。

 本型には華々しい戦歴は無いが、日本2度目の戦時急造艦である樺型のプロトタイプとなるなど、駆逐艦史にあたえた影響はそれなりに大きいといえよう。



櫻型要目(新造時)

 名  称   櫻型
 ネームシップ  櫻
 建造時期  明治45年5月21日〜明治45年6月25日
 建 造 数 2隻
 基準排水量  530トン
 全  長   83.5m
 水 線 幅   7.3m
 吃  水   2.2m
 主  機   直立式三連成レシプロ蒸気機械3基
 推 進 軸 3軸
 主  缶   イ号艦本式水管缶5基(重油・石炭混燃) 
 出  力   9500馬力
  計画速力  30ノット
 航 続 力 15ノットで2400浬
 燃料搭載量  重油30トン、石炭128トン
 乗  員   94名
 兵  装   12センチ40口径単装砲 1基
  8センチ40口径単装砲 4基
  45センチ連装魚雷発射管 2基



櫻型の航跡

櫻 Sakura
明治45年5月21日、舞鶴工廠にて竣工、駆逐艦に類別
大正元年8月28日、二等駆逐艦に等級変更
昭和7年4月1日、除籍

橘 Tachibana
明治45年6月25日、舞鶴工廠にて竣工、駆逐艦に類別
大正元年8月28日、二等駆逐艦に等級変更
昭和7年4月1日、除籍