こみっくパーティー
 こみっくパーティー

  Leaf(アクアプラス) 定価:8800円  発売:99年5月

 F&Cリーフの18禁アドベンチャーゲーム。ほとんどサクセスストーリーになりつつあるリーフの最新作ですが、従来のスタッフはほとんど関与していない新ラインによる作品なので従来の作品とは別物とみるべきものなのかも知れません。

 友人にそそのかされて同人誌の世界に踏み込んだ主人公が同人誌作成や即売会を通じて女の子と出会って・・という「同人恋愛シミュレーション・アドベンチャー」です。
 内容的にはひとことで言えば「Piaキャロもどき」、ふたことで言えば「Piaキャロの同人誌版」。まあ、グラフィックの人がF&Cからの移籍なので絵柄が似てるのはともかく、なぜかシステムまでPiaキャロそっくり。シナリオの構成も、内面よりもイベントを重視したリーフよりF&Cみたいな部分が見られ、オープニング曲「As Time Gose by」まで「WHITE ALBUM」や「Brand New Heart」より「Go!Go!ウェイトレス」に近いものがあります。

 ゲーム期間は1年。平日は同人誌を描いたり、練習したりして過ごし、土日は平日の続きのほか、外出したり女の子に電話したりできます。月1回、即売会があり、それを中心にイベントが進んでいきます。
 同人誌の製作は最初にジャンルとページ数、表示(単色、多色、フルカラー)を選択し、あとは「原稿を書く」(急ぐ、普通、丁寧)と「表紙を書く」コマンドを一定回数以上繰り返せば完成というお手軽なもので変化が乏しく、2・3人攻略する頃には定型化してしまい、飽きてしまうのが難点です。
 攻略可能キャラは一般人(瑞希)、即売会スタッフ(南)、浪速の猪突猛進娘(由宇)、商業同人(詠美)、マイナージャンル(彩)、コスプレ(玲子)、印刷屋(千紗)、ファン1(あさひ/準隠しキャラ)、ファン2(郁美/隠しキャラ)の9人。本格的な隠しキャラで終了直前まで正体のわからない郁美を別にすれば、ツボを押さえた萌え萌えな設定&イベントが炸裂していますが、イベント同士の連結は弱い目となっています。

 気になるのがHシーン。まあ、Hシーン以外にウェイトを置いている多くのゲームがそうなんだけど、Hシーンへの導入がどうしても無理が出ています。いちおう、シンデレラ型とか弱っている所につけこむ型だとか、形式はふんでいるのですが、どうしても「とってつけた感じ」がぬぐえない部分があります。
 しかし、それ以上に浮いているのは主人公の性格。Hシーンになると性格が豹変して女の子を嬲る嬲る。感動的なイベントで二人が結ばれ、その直後にエロビデオのようなHに突入する感覚は理解できません。もっとも、「痕」でも根性無しが楓ちゃんを嬲って泣かせたりしており、Hシーンが必要以上にねちっこいのはリーフの特徴とえいば特徴なんですが・・(ついでに、全員が全員、初Hなのにほとんど苦痛がなくていきなり積極的になったりするのもリーフの特徴が出てるのかも)

 総合的に見ればかなりクォリティの高い作品です。CGは256色ですが、フルカラーに比べて全く遜色がないどころか、大半の作品には勝っている出来。音楽も文句なし、シナリオもストーリーを通せば頼りない部分があったり、不満もあるものの充分及第。システムも同人誌作成に飽きがくるもののイライラするレベルではない、CD−ROMの品質やプログラムのバグやシナリオの矛盾も少なくとも私の環境では致命的ではなかった。(アルバムモードで特定のCGを表示しようとすると確実に落ちるというのが最大の不具合)と『名作』と評価してもいい作品だと想います。
 が・・リーフが出したという点が一番気に入らない。あれだけの勢いのある会社なんだから、安直に他所の会社の芸風を真似ずに直球勝負で「貴族の義務」を果たして欲しかったというのが正直なところ。先頭ランナーが変なところに入りこんだら後続もみんなついてきちゃいかねません・・・
 彩シナリオにおける主人公の台詞を借りると・・・

「いや、つまらない訳じゃない。ほかのギャルゲーのレベルからすれば十分に面白い部類に入る。でもな、リーフの1番の長所であった、純粋な話の面白さを・・深みを感じない。それに、どことなくぎこちない・・付け焼刃な感じが読む方を冷めさせる・・これじゃまるで・・出来の悪いF&Cの同人誌だ」

 よって私的評価は「名作」から2級落ちて「佳作+」。でも、東京チームの事実上の処女作でここまで作ったという事は次回作への期待を込みにして「名作−」ってコトにしときます。


 萌えキャラは・・・大庭詠美。販売部数トップクラスを誇る超大手の同人。有頂天になってしまい部数主義に走ってしまっていますが、そのツケがまわってきて・・・
 でも、自分で萌えといて何ですが、なんで詠美なんでしょう。この娘は(終盤までは)プライドが高くて生意気なキャラなんですが、私は現実仮想を問わず生意気なガキというのはアメリカと納豆とファッション右翼と平和ファシストと非常識なオタクと傍若無人なババアに並んでキライなので、後半の展開がいくら良くても「あずさ現象」(序盤の印象が悪すぎて後半も萌え切れない現象。Piaキャロ2の日野森あずさより命名)が起きて駄目はずなんですが、なぜか起きませんでした。序盤から、素直になれなくてかわいい面をちらちら出しているのが効いたのでしょうかね。
 次点は長谷部彩。詠美とは正反対な販売部数3部とか4部とかのマイナー同人。売れっ子になっていく主人公と一緒に続ける為に彩が選んだのは・・・
 こっちは、年下でおとなしめの無表情系、主人公の為に自分の想いを押さえ、自分を犠牲にするという、考えて見れば属性的に楓ちゃんにも近い訳で、最萌えにならなかったのは本当に不思議です。
 もしかしたら、私の中で何かが目覚めつつあるとか・・そのうち、乳臭いガキに興味はないねとか、やっぱり巨乳っすよ〜なんていいだしたらどうしよう?(笑)


発見!日本海軍+海運

 桜井あさひ。マニュアルには名前は載ってない準隠しキャラ。
  日本海軍は<朝日>。明治30年から開始された第二次拡張計画によりイギリスに発注された当時、世界最強級の戦艦です。
 聯合艦隊の主力として日本海海戦などで活躍。その後はワシントン条約により特務艦に転籍となり、練習特務艦を経て我が国初の潜水艦救難艦に改造されました。
 昭和6年ごろから工作艦として使用され、日華事変・太平洋戦争では昭和17年5月にカムラン湾沖で米潜<サーモン>の雷撃をうけて沈没するまで、主に大陸方面で艦隊の修理・整備に従事し影から日本軍を支えました。
 その生涯の前半は第一線で華々しい活躍を、後半は特務艦として裏方として地道な任務で海軍を支え、40余年間に渡り日本海軍に貢献した稀有の功労艦といえます。

 さて、マニュアルにはあさひちゃんの名前が載ってなかったので、該当艦なしとして、商船についても調べちゃいました・・・

 猪名川由宇。浪速のど根性娘(家は神戸だけど・・たぶん有馬だと思う)。
 <猪名川丸>。大阪商船が明治23年に建造した木造貨客船。日本初の鋼造商船である<筑波川丸>などと同期の第6期建造で、木造小型船ながら黎明期の大阪商船を支えました。
 明治25年<吉田川丸>に改称。大正9年に土佐沿岸汽船に売却。

 高瀬瑞希。主人公の高校時代からの友人でスポーツを愛する一般ぴーぷる。
 本質的に向こう側の人間ですが、こっちの側の世界を嫌悪してみたり、理解を示そうと努力してみたりの振れがストーリーの基底になっています。ハッピーエンドではこっち側を理解するだけですが、バッドEDには完全にこっち側の人になるパターンもありました。(笑)
 <高瀬川丸>。大阪商船が昭和19年に建造した2E型戦時標準船。昭和20年6月24日、関門海峡でB29がバラまいていった機雷に触れ沈没。
 ちなみに、戦時標準船というのは、戦争により不足した船舶を補うべく大量建造された規格商船で、日本の場合、第1次から第4次まで4回の設計が行われ、約1000隻が建造されました。
 目的上、各次・各型とも性能や経済性より生産性を重視した設計となっているのですが、そのなかでも<高瀬川丸>の属する第2次戦時標準船E型(近海用低速小型貨物船)は削れる部分はすべて削り、耐用年数も僅か5年に設定し、「沈められるよりも多く建造すれば勝ち」的な思想で量産のみを目的としており、戦標船最多の419隻が建造されました。
 戦時量産という発想は極めて健全で設計も優秀だったのですが、動員や生産強化で生産性が怪しくなりはじめた時期に量産された為、極端に品質が悪い船が多くなってしまい「門司からシンガポールに向かったが、故障の連続で半年経っても、まだ台湾」、「甲板掃除の為にデッキに水をかけたら船倉まで水びたし」「航行中、突然、浸水・沈没した」「予定の半分以下の3ノットしかでず、海流に流されて前に進まない」などという信じられない「武勇伝」を残す戦争の徒花になってしまった不幸な船型でした。


              第二次戦時標準船E型 (2E型戦標船)