大悪司
 大悪司

  アリスソフト 定価:8800円  発売:2001年11月
重要なヒロインがラストで・・・。何人かのキャラが病人ですが大勢に影響はありません。

 関西の大御所アリスソフトの18禁SLGモドキ(SLG風RPG)。
 栄華衰亡の激しいこの業界で我が道をひたすらと歩む珍しい会社で古くからの固定ファンも多く独自の世界を形成しています。

 舞台は女性至上主義を奉じるウィミイ国との戦争に敗れたニホン国オオサカ。主人公は地域管理組合(ヤクザの組みたいなもの)「わかめ組」の跡取でしたが、戦地から帰還してみると組は乗っ取られており、それを取り戻す為に戦いを始める・・みたいな話。
 史実ベースではありませんが、設定的には昭和30年代っぽい雰囲気があります。(特に意識して時代感覚を出そうとしてないようなので、始まってしまうと現在とごっちゃになります)
 設定上、「仁義なき戦い」みたいな話かと思っていたのですが、新興宗教、進駐軍、ハニワ、異世界の勇者、放射能による突然変異、宇宙からの病原菌、大和撫子、看護婦、着ぐるみ娘、パンダ、竹やり娘、ジャンキー、幽霊、海賊、悪魔と全くもって何でもありの賑やかな世界でした。

 主人公、山本悪司は組の跡取として「偏った」教育を受けた為、悪事を悪事として認識しておらず、また女性に対しても単なる道具として見ているという、主人公にあるまじきキャラです。
 アリスソフトで悪漢型の主人公といえばランスが居ますが、ランスは女好きでハーレムを作って喜ぶタイプなのに対し、悪司にとって女性は道具でしかないけれど、彼の心の神殿は1人の女神しか祭らないなど、似ているようで本質的な点で異なっています。

 ゲームは光栄型の陣取りゲーム。他勢力に攻めこんだり攻めこまれたりすると個人単位の戦闘となります。
 戦闘では敵キャラを捕獲する事もでき、捕獲したキャラはこます(女性のみ)か買収して部下にしたり、売春宿に送りこんだり(女性のみ)、拷問して情報を引き出したりできます。
 ただし、SLGとしては全くの論外。これをSLGと呼ぶのはゼビウスをフライトシミュレータと呼ぶぐらい無茶な事です。と、いうのも、この作品、プレイヤーの戦術/戦略スキルの影響を全く受けないのです。得られる情報が非常に少なく、その上、シナリオ進行を破綻させない為に乱数に調整が入ったり(絶対勝てなかったり、捕獲できなかったりする)する為、500年前に産まれていたら天下統一を成し遂げたであろう戦争の天才よりも10回この作品を遊んだそこらの逸般人の方が巧くプレイする事ができる筈です。
 でも、RPG風味のAVGとして見れば秀逸。イベントも多いし、キャラクターも数が多いのに充分に奥行きがあって活きています。また、複数回プレイすれば先の展開や有用なキャラが判るようになり有利に展開できるようになるので、スキルが足りないと手も足もでなくなるSLGやACTよりもギャルゲーとしては正しい選択かと思われます。

 ストーリーは一本道で途中で分岐があって、再び本筋に戻る方式で約10通りぐらいのルートがあり、ヒロインは7人(6+1人)。
 本筋以外にもイベントが大量にあるので、かなり長時間遊ぶ事ができるので極めてコストパフォーマンスの良い作品といえます。(私は既に時間あたり100円を割っています)
 大規模な作品ですから、CGやイベントは複数人で分担しており、タッチの違いやテキストの温度差ははっきりとわかるのですが、グランドデザインがしっかり通っているせいか混雑の中にも統制があってしっかりとまとまっています。

 私的な評価は・・・文句無し名作(上の中)。とにかく老舗らしい、ちゃんとした「ゲーム」になっています。もう10年以上に渡って高い水準を維持しているアリスは大したもんだと思います。
 死にゲー/病みゲーのレーティングは2/3と認定。死にについては切った張ったの世界なので死人は山盛りですし、シナリオによっては主人公の嫁になるキャラが自害するイベントがあるのですが、あまり重みがないので「3」が適当かとも思いましたが、あるシナリオでは重要キャラが重い死に方をするので「2」に引き上げました。メインヒロインかどうかは悩んだのですが、そのキャラが嫁の時にはそのシナリオには入らないので「2」にとどめましたが果てしなく特2に近い2です。
 病みについては数人のキャラが病気を持っていて、その類のイベントもありますが大勢には影響しないので「3」としました。

 お気に入りは・・・乃木喜久子。悪司の嫁になると山本喜久子。
 戦犯となり死刑が確定しているニホン軍の指揮官・乃木重彦の孫娘。正当派の大和撫子。
 なんでもありなこのゲームでは地味な方に属し、イベントでも飛び道具らしい飛び道具は使わないのですが、言動がいちいち萌える大変卑怯なキャラです。

 次点は岳画殺(さつ)。悪司の嫁になると山本殺。
 主人公の叔母で13歳と天が許してもソフ倫が許さない不可侵キャラですが、殺ちゃんルートだとCGなどはそのままで血縁なしの18歳として登場するという最上型巡洋艦(軍縮条約の枠内の軽巡として建造されたが、実は20cm砲搭載の重巡として設計した上で軽巡の条件である15cm砲を取り付けた艦。後に20cm砲に換装。)のような技を使い天下御免の攻略可能キャラになります。しかし、本当に大丈夫なんでしょうか・・
 13歳離れした冷静・冷酷なキャラで主人公の想い人を爆殺したり、とりついた幽霊をはらったり、進駐軍を一人で制圧したりと恐ろしい活躍を見せます。

 以下、アンリ、土岐遥、炎どん子、山沢麻美、中山多恵子あたりですかね・・なんか、色んな意味で「不器用」なキャラが多いな(笑)


大悪司と日本軍

 アリスは昔から凝ってるのか凝ってないのかよく判らない傾向があり、変な所で凝っているくせに、ここは当然凝るべき、って所を外します。おそらくは、この道の人が開発スタッフに混ざっているけど、公式な方針として凝っている訳ではない、って事でしょうが・・

 まず、主人公・山本悪司はルソン島からの帰還兵。所属は南方方面軍ルソン守備隊第十七軍第三師団と言ってましたが、拘るのなら師団は第四師団であるべきです。日本軍は郷土連隊主義といって出身地毎に連隊を編成するのが原則で、大阪出身者は通常は歩兵第8連隊や歩兵第37連隊のような第四師団の配下かその子部隊、関連部隊に入営しました。
 あくまで原則ですので、北海道を担当する第七師団など元々の人口が少ない地域の部隊や激戦で補充が追いつかなくなった部隊は各地混成となっていますが、名古屋・東海地方が担当で、しかも太平洋戦争の全期間を大陸でおくった第三師団に大阪兵が配属される可能性は相当低かった筈です。
 ついでにいうと、史実ではルソンの守備部隊は南方軍第十四方面軍第三十五軍が主力。第十七軍はルソンではなくブーゲンビルに、第三師団は支那派遣軍直轄として中国鎮江(江蘇省)に所在していました。(ちなみに第四師団は南方軍第十八方面軍第十五軍に属してタイに所在)

 また、乃木重彦なるキャラが出てきます。ニホン軍の指導者で戦犯として死刑を待つ身ですが、展開によってはクーデターに担ぎあげられたり、主人公の義祖父になったりします。
 設定から元ネタは名前から乃木希典大将、設定から山下奉文大将か阿南惟幾大将あたりかと思われましたが、結局、どれでもなかったようです。


 艦についても名前だけで設定までは引っ張ってないようで、「従順(重巡)3人組」がいいとこみたいです。

 一番最初に悪司にのっとられる青年奉仕団の幹部3人、最初に部下になるキャラですが団長で既婚者の青葉曜子、大食らいの加古未来、真面目で内気な衣笠智子。
 巡洋艦<青葉><加古><衣笠>。いずれも平賀デザインの古鷹型一等巡洋艦です(青葉と衣笠は青葉型として別に分類する事もあります)。備砲の関係で重巡洋艦となりましたが、当初は艦隊決戦において主力に先行して索敵を行い相手の索敵部隊と遭遇した際にはこれを撃退する「偵察巡洋艦」として設計されており、最初に計画された<加古>は一等巡洋艦の山岳名ではなく二等巡洋艦に与えられる河川名がつけられています。
 この4姉妹は我が国の重巡としては最古参でしたが戦争の序盤に活躍の機会が与えられ、4隻揃って序盤の攻略支援などで活躍、第一次ソロモン海戦では海戦史上に残る完全勝利を演じています。しかし、その栄華は短く、その2日後に<加古>が潜水艦の雷撃をうけて沈没、2ヶ月後のサヴォ島沖夜戦で<古鷹>が、3ヶ月後の第三次ソロモン海戦では空襲で<衣笠>が沈没しました。
 ただ<青葉>のみが砲撃、雷撃、空襲と各種方法で中大破しながらも生き延び、大破着底状態で終戦を迎え戦後に解体となっています。
 未来でクロモンを攻撃すると占領後、あっさり逝くところは<加古>っぽい気もしますが、他にそういう事がないので、単なる偶然なんでしょう。

 加賀元子はわかめ組の幹部で主人公の幼馴染。無口でキツイが根は純情という基本タイプ。悪司のお嫁さん候補の一人ですが、ストーリー的には民華が、属性的には殺や喜久子がいる為、イマイチ影が薄いような気がします。
 加賀太郎は元子の父親。わかめ組の先代組長の親友で組を守るために娘を・・・まあ、脇役。
 航空母艦<加賀>。長門型に続く八八艦隊計画の戦艦として計画されましたが、ワシントン条約で廃棄が決定、射撃訓練の標的になりかけますが、空母に改造される予定の<天城>が関東大震災で破壊された為に空母に改造されて生き残りました。
 基準排水量38200トン、速力28ノット、搭載機90機。日本機動部隊の主力として活躍しますが昭和17年6月5日、ミッドウェイ海戦に置いて発進準備中に急降下爆撃を受け敢え無い最期を遂げました。

 五十鈴伊万里。市長の娘・中山多恵子の親友。悪司の罠にかかった多恵子を助けるべく動きますが、逆に悪司に捕らわれてしまいます。
 巡洋艦<五十鈴>。いわゆる5500トン型と称される長良型二等巡洋艦です。
 開戦時にはやや旧式化していましたが、第二遣支艦隊の旗艦として大陸方面で活躍。その後、ソロモン海に転じますが、第三次ソロモン海戦で大破。修理のついでに対空兵装を著しく強化した(12.7センチ高角砲6基、25ミリ機銃38丁)防空巡洋艦に生まれ変わり、比島海戦では機動部隊の護衛として奮戦しますが半年後にインドネシア近海で潜水艦の雷撃をうけて沈没しました。

 羽黒。神主が戻ってくるのを信じて一人残るオオサカ神社の巫女さん。巫女という強力な属性を持っているのですが、部下にはできないせいか影が薄いです。
 妙高型巡洋艦<羽黒>。ロンドン条約の制限下に建造された条約型巡洋艦の第1シリーズで攻撃力、速力、防御力ともに列強の同様の艦に比べて一頭出た性能を誇っていました(設計では1万トンでしたが、実際に作ったら1万トンをかなり超えたので反則ですけどね。)
 太平洋戦争ではセレベス島攻略を皮切りにアッツ、ソロモン海、スラバヤ、ミッドウェイと太平洋を縦横に駆けまわり、ブーゲンビル島沖海戦やサマール沖海戦では窮地に陥るもきわどい所で虎口を脱する活躍をみせましたが昭和20年5月、アンダマンへの強硬輸送中に潜水艦の雷撃を受け損傷、その後、英駆逐艦の雷撃を受けて沈没しました。

 この他、陸奥(長門型戦艦)、朝顔(若竹型駆逐艦)、吹雪(吹雪型駆逐艦)、春風(神風型駆逐艦)などなど。

青葉
◆重巡洋艦<青葉>
 <衣笠>でも良さそうなもんですが、カタパルトがついてないからやっぱり<青葉>です。

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