光を…
 光を…

  LiLiM/彩文館出版 定価:8800円  発売:2000年3月

 18禁アドベンチャーゲーム。
 昨今の感動系のヒットで死が前面に出ている「死にゲー」や病気や障害のあるキャラが出る「病みゲー」が全盛の感があり、本作もその系列なんですが、ヒロインではなく主人公が盲目という、一風変った設定となっています。(病人や盲目のヒロインも出てきますけどね)

 幼い頃に事故で失明したのですが、すでに機能的には回復し、光を取り戻すには「精神的なあと一歩」が必要な状態となっている主人公が女の子と出会い(あるいは再会、あるいは相手の気持ちに気付き)、親しくなっていく課程で「最後の一歩」を踏み出すというお話です。

 主人公は盲目ですから当然ながら画面は真っ暗、音だけで展開する・・という仕様には流石になっていませんが、CGにはフィルターがかかり、登場するキャラの姿も主人公の「想像上の姿」であるという事で、光を取り戻す前と後では義妹や幼馴染など失明する前から知っているキャラはそれなりに似せて(髪型などが違うし、着ている服も野暮ったい感じ)、新たに出会ったキャラは全く別の姿になるという、ちょっと凝った仕掛けになっています。

 システムは標準的なノベル系のAVG。既読メッセージスキップと随時セーブ/ロード(24ヶ所)と必要十分。ただし、瑣末な事ですがセーブ/ロードのページ切り替えがカスケードメニューになっている点はちょっと使いにくいと感じました。
 ストーリーは基本的に一本道に各キャラのイベントがフラグや選択により発生する方式で、ラスト前に各キャラ専用のルートに切り替わります。選択肢は素直で判りやすいものが多くて好感が持てました。
 CGは癖の少ない今風のアニメ絵、書き分けもできてるし、いいんじゃないでしょうか。音楽もテキストを邪魔してないし問題ありません。

 ストーリー的に気になったのは、主人公が光を取り戻す最後の部分を「精神世界」なるメンタルだかサイコだかの物に「投げた」点。不条理な展開や話の破綻で「奇跡」に頼るしかなくなったのならともかく、ちゃんとストーリーで語られたのだから、「闇の巫女」などという怪しげな存在に頼る必要があったのかは多いに疑問です。
 あと、純愛系の作品の宿痾というべきHシーンの不自然さは本作も免れていません。Hシーンの導入まではわりと巧いこと処理していると思うのですが、始まっちゃうともう駄目駄目。2人とも経験が無いのに巧い。特に主人公は直前まで眼が見えてなかったのに、そんなの何処で覚えたんだか・・・

 萌えキャラは・・みんな良い娘ばかりですが、1番は義妹・鮎川真奈。主人公の失明に責任を感じ、かいがいしく世話をする天真爛漫なしっかり者。
 私は妹属性は無い(最近なんだか自身が無くなってきたけど・・)のですが、「真奈がこの世で一番最初にお兄ちゃんを好きになって、一番お兄ちゃんの事を知ってて、一番お兄ちゃんに近い存在で、そして世界で一番お兄ちゃんのことを想っている女の子だって事を・・」なんて台詞は卑怯すぎです。
 次点は幼馴染、結城まどか。幼い頃の約束を胸に抱きつづけていた、これまた一途なキャラです。やっぱり、私は新しく知り合うキャラより、ゲーム開始時にすでに主人公を想っているキャラの方が萌え率が高いような気がします。

発見!日本海軍

 氷川みるく。名前といい、変な喋り方といい、猫と会話が出きることといい、ロリキャラの王道を征ゆくようなキャラですが、実は年上。白痴系のロリキャラとみせかて、実は病人で、とても強い人と意表を突いたキャラでした。
 日本海軍は特設病院船<氷川丸>。ちなみに私が一番好きな船です。
 昭和5年に北米航路シアトル線(香港〜横浜〜シアトル)用のパシフィック・オーシャンライナーとして日本郵船が建造した1万トン貨客船ですが、戦争中は海軍に徴用され特設病院船として負傷将兵を乗せて太平洋を駆け回り、3度の触雷を経験しつつも外航客船としては唯一、戦争を生き延び、戦後は引揚や食糧輸送に従事し、昭和28年には再開された北米航路に復帰、太平洋横断238回の記録を残して昭和35年に引退するまで働きつづけた日本船舶史に残る功労船です。
 引退後は横浜港・山下公園桟橋に繋留展示され、建造から70年が経過した現在も博物館兼レストラン兼イベント会場として健在です。

 天乃皐月。「おっとりとしているが、実はしっかりした大和撫子」というちょっと不明な性格設定の主人公の通う学校の保険医。
 いわゆる年上キャラで私的にはどうでもいいキャラな訳ですが(笑)、「お姉さん」というより「お母さん」という雰囲気で、作中でも主人公は母親の面影を重ねています。もっとも、皐月の方も亡き恋人の面影を重ねており、「お前等、本当にそれでいいんかい」って感じもします。
 日本海軍の<皐月>は駆逐艦が2隻。初代はロシア駆逐艦<ヘドウィ>。明治38年竣工の最新型で、バルチック艦隊に属してアジアに遠征したものの日本海海戦で洋上降伏し、日本海軍に編入され<皐月>と命名されました。捕獲時に旗艦<スウォーロフ>を失ったバルチック艦隊(第二太平洋艦隊)司令長官ロジェストウェンスキー提督を乗せていた事で知られています。大正2年除籍、大正10年廃船。
 二代目は睦月型駆逐艦。大正14年竣工、太平洋戦争期の駆逐艦としては数世代前に属する旧式艦ながら主に南方で活躍、バタビア沖海戦やコロンバンガラ島沖夜戦などにも参加しましたが、昭和19年にマニラに在泊中に空襲を受けて沈没しました。

氷川丸
 ホワイトリボンと二引のファンネルマークが凛々しい<氷川丸>(横浜港)