Kanon
 Kanon

  KEY(ビジュアルアーツ) 定価:8800円  発売:99年6月

 KEYの18禁アドベンチャーゲーム。KEYはこの作品がデビュー作です。

 両親の転勤により、親戚の家に居候する事になった主人公が7年ぶりに戻ってきた街で5人のヒロインと織り成す、現在と過去・日常と非日常が交錯するファンタジックストーリー。

 ご存知のとおり、KEYはTacticsのメンバーの大半が離脱して起こしたブランドですが、本作は良くも悪くも「ONE」の後継作品です。
 「ONE」は、ひとつ間違えたらエライ事になるようなファクターまで持ち出してキャラクターを立たせていましたが、本作も「立ったまま眠る(名雪)」「食い逃げ(あゆ)」「不治の病(栞)」「記憶喪失(真琴)」「夜中の学校で抜き身の剣を振り回す(舞)」「物の怪」「生霊」など、ひたすららインパクトのあるキャラクター設定となっており(インパクトの割にプレイ後の印象が薄すぎるような気はします)、ストーリーも「ONE」の「えいえん」同様、「夢」「想い」「力」といった哲学的なファクターが基底なのですが、かなり判りやすい形になっており、ほとんどのキャラはストーリーが収束しています。
 ただ、ちょっと気になったのは表現があまりにも「ONE」に似ている部分があり、また、何人かの登場人物の性格は「ONE」のキャラそっくりで、一部は台詞まで同じになっています。行きがかり上、「ONE」を非常に強く意識した結果、そうなったと思うのですが、まさか、ライターの表現力がこれで打ち止めなんてオチがつかない事を切に祈ります。

 あと、ストーリー重視の作品の宿命なのかもしれませんがHシーンが浮いてしまっています。「ONE」もHシーンは「とってつけた感じ」が強く出ており、PS版では単純にHシーンをカットしただけなのに全く違和感がなく、むしろ飲酒シーンのカットの方が不自然だったという笑えない事がありましたが、本作ではHシーンは本当に「とってつけた」形になっており、Hシーンを通らなくても攻略が可能になっています。
 まあ、Hシーン無しのルートがあっても、それはそれで別にいいんですが、栞シナリオのラスト付近で栞が「商店街を歩いた」とか「お弁当作った」とか「おっきなパフェを食べた」とか主人公との出来事を振り返るシーンがあるのですが、たとえHしてても、その事については言及されないってのはあんまりだと思います。それだったら最初から全年齢で出せよ・・なんて思ったりします。

 システム的な部分ではメッセージエリアのバックスクロールが無い事には往生しました。メッセージエリアは3行表示で選択肢もメッセージエリア内に出るので、「既読メッセージを飛ばす」にしていると、いきなり選択肢だけが出ている状態で止まり、で何を聞いているのかすら判らないなんて事が起きてしまいます。この手のゲームでバックスクロールは必須だと思うんですが・・・

 CGは綺麗。口元にちょっと癖があったり、ポーズによっては頭身がひどく狂ったりしているようですが、まあ許容範囲内でしょう。立ちCGが異様に大きい(大半のイベント絵より大きい)のはいいのですが、ノンボイスで250MBってのは何だかなぁ・・と思ってしまいます(そのうち、気にならなくなるんでしょうが・・)
 音楽は文句なし。初回版特典のアレンジCDは「初回版買って良かった」と思わせる数少ない例のひとつとなりました。
 全体的に「ONE」の長所を維持したまま『「右か左か」のような無意味な、かつクリティカルな選択肢』『ひとつでも選択肢を間違えるとバッドエンド直行』といいた欠点がしっかり直さた好感の持てる作品なのですが、「ONE」の延長上の範囲に纏まってしまっているのは残念な所です。次回作の飛躍を期待します。
 私的評価は「佳作+」。アレンジCD込み(すなわち初回版)で「名作−」という事にしときます。

 萌えキャラは・・・話としてはキチっと閉じている真琴シナリオが好きなんですが、キャラとしては難しいところです。純粋にキャラだけなら名雪、シナリオを込みにすると栞かなぁ・・

発見!日本海軍

 水瀬名雪。主人公の従妹。ちょっと天然的に浮世離れしてしまっている性格と立ったまま眠る愉快な性格。ほかのゲームなら「変なキャラ代表」といったところだけど、全員が全員ぶっとんでいるKanonでは「一番マシ」なキャラだったりします。みさき先輩の親戚だという説もあります(笑)

 日本海軍のみなせは<水無瀬>。3回も候補/予定艦名にあがりながら1隻も建造されなかった幻の艦名です。
 最初は八八艦隊計画の一環であった長良型軽巡洋艦の6番艦の予定艦名として<阿武隈>と共に候補に上がりましたが、結局は<阿武隈>が選ばれました。(軍艦の命名は複数の候補を作成し、天皇に決めてもらう事になっていた)
 2回目は同じく5500トン級軽巡である川内型5番艦として復活。ところが、今度は八八艦隊計画がポシャってしまい、川内型は3隻で打ちきりとなり、これまた幻の艦となりました。
 3回目は改(5)計画の甲型海防艦。前の2隻が淀川支流の水無瀬川からの命名なのに対し、今回は防予諸島の水無瀬島からの命名でした。しかし、この艦も戦局の逼迫により計画中止となり、ついに<水無瀬>は建造される事はありませんでした。(戦後、海上自衛隊が掃海艇<みなせ>を計画しましたが、こちらは無事に建造されました)

 ついでに・・「Kanon」は聖典とか音楽の種類とかを意味するドイツ語だと思うのだけど、オランダ語だと、カノン砲のことなんですね。(ちなみにドイツ語のカノン砲はKanone)
 カノン砲・・長い砲身と直線を描く弾道が特徴。艦載砲や車載砲の多くは直線弾道ですが、太平洋戦争では10センチ加農砲(ピストルピート)や155ミリカノン砲M2(ロングトム)など野戦砲としても各国で使用されたようです。(最近では流行らないようで、自衛隊の装備年鑑をみても野砲に加農砲はありませんでした。)