京 都
 京 都

  eLia/TGL 定価:8800円  発売:2000年10月

 TGL(戯画)のブランドであるところの「eLia」の18禁ノベル系AVG。

 タイトルの通り、京都を舞台としたご当地ソフト。観光地・京都ではなく、実際に人が住んで生活する京都を描こうとしたようですが、京都である意味がほとんど生かせず、実際の京都の地名を使っている、ただそれだけの話になっているのが残念な所です。

 ストーリー的にも見るものは少なく、「女性の嫉妬を題材とし、心境の変化はもちろん平凡な恋から身体を張った略奪愛まで」とうたっている事は大きいのですが、実際はかなり平坦です。
 私は主人公の性格設定も「物語の一部」と思ってますから、同調できるとか出来ないとかの批評はしないのですが、この作品の場合、あまりにも状況に流されすぎ。主人公の性格はきっちり固めない方が感情移入させやすいというのも一つの技法ですが、本作はあまりに主体性無さすぎで、感情移入の前に、主人公を介してプレイヤーが物語に介入するのすら阻止しているような印象さえ受けました。

 CGは塗り的には悪くないのでしょうが、あんまし京都という印象は受けません。どうせなら、もっとしっとりした絵柄の方が良かったんじゃないでしょうか。
 本作は実写背景ですが、肝心の京都らしい部分の所で絵が無いので、あまり活かせていません。
 まあ、お店とかの写真は勝手に使う訳にはいかず、知名度が充分に高いハドソンが地元の観光団体やら自治体やらの協力を取り付けた一般作品の「北へ。」でさえ苦労したものを、制御&エロゲー業界ではともかく一般には知名度の低いTGL/戯画/eLiaが、保守的な京都の老舗を相手に18禁作品でどうこうできるとは思えませんが、使えないなら使えないで何らかの工夫をすべきで嵐山公園とかの当たり触りの無いところの写真だけ使っても仕方ないように思えます。

 BGMもあまり京都って感じがしませんが、何より問題なのは腰の砕けるようなへちょい効果音。あれは鳴らさない方がマシです。(メニューでOFFに出来るので許容範囲ですが)。

 萌えキャラは・・・該当なし。百年の恋も醒めちゃう略奪愛ルートは余計です。

 ひとつぐらい褒めておくと、誤字・脱字が殆どありませんでした。簡単にチェックできるもんだから、推敲・校正ぐらいできて当然ですが、その当然が出来ないソフトハウスが多いので、これは得点です。
 が・・・1ヶ所、京都の「哲学の道」は「銀閣寺」ですが、「金閣寺」としてる部分がありました。これはご当地ソフトにあるまじき間違い、これ一発で誤字脱字の少ない分は全部チャラです。

 そんなこんなで私的評価は「論外」。京都に拘らなければ、ただのイマイチな作品だと思うのですが、ご当地ソフトとしては全くお話になりません。このソフトハウス、他の地域の作品も出して行くような噂を聞きましたが、このクォリティでやるなら、やらない方がいいと思います。

京都と日本海軍

   駆逐艦<霞>がありますが、折角なので今回は「京都と日本海軍」でいきます。

 京都は京都でも古都のイメージのある南部ではなく、北部の日本海側なんですが舞鶴鎮守府。舞鶴港は日本海にのぞみ、ロシア沿海州と朝鮮半島の両方を牽制できる要港で、明治22年に第四海軍区(日本海方面)軍港設置が決まりました。しかし、資金的な問題から後回しになり、明治29年に日清戦争の賠償金によりようやく着工、明治34年に舞鶴鎮守府開庁となりました。ちなみに初代司令長官は後に連合艦隊司令長官として名を馳せる東郷平八郎中将(当時)でした。
 明治36年、舞鶴海軍工廠が発足、以後、駆逐艦専門の造船所として多くの駆逐艦を建造しますが、特にシリーズのネームシップは常に舞鶴海軍工廠で建造されました。
 日露戦争後、主敵がアメリカにシフトし、舞鶴の価値は低下、さらに大正12年の軍縮条約の影響をうけ、舞鶴鎮守府は要港部に、海軍工廠は工作部に格下げされてしまいますが、世界情勢の悪化に伴う軍拡により昭和11年にまず工作部が海軍工廠に、昭和14年には要港部が鎮守府にそれぞれ再昇格を果たしています。
 また、舞鶴工廠には造船部のほかに機関実験部が置かれて各種機関の研究が行なわれ、大正14年からは兵科将校の兵学校に相当する機関将校育成機関である海軍機関学校も舞鶴に移されました。(機関学校は昭和19年に海軍兵学校に統合されて舞鶴分校となりました)
 現在も海上自衛隊の舞鶴地方隊や第3護衛隊群が置かれるなど、日本海の護りの要となっています。

 その他・・靖国神社がある東京都を除く道府県には国難に殉じた英霊を祭る「護国神社」がありまが、京都府は京都霊山護国神社。こちらは京都市内で清水寺と八坂神社の間にあり創建は明治元年と総本山の靖国神社より古い歴史があり、一般には坂本竜馬や桂小五郎といった幕末の志士の墓がある事で有名です。
 太平洋戦争関係では京都師団である第百十六師団や第五十三師団の諸部隊の記念碑なんかが建っているのですが、駆逐艦<長波>慰霊碑も置かれています。なんで<長波>なのかは判らなかったのですが、<長波>が沈んだレイテ島の防衛担当が京都の第十六師団だったのと関係があるのかもしれません。
 駆逐艦<長波>。昭和17年6月30日に夕雲型4番艦として竣工。日本海軍最後の大勝利となったルンガ沖夜戦で旗艦を務めていた事で知られる艦で、南太平洋海戦、第三次ソロモン海戦、キスカ撤収作戦、レイテ沖海戦なども参加した歴戦艦でした。
 昭和19年11月11日、オルモック湾で輸送作戦中に空襲を受けて沈没しました。