ラブ・ネゴシエイター
 ラブ・ネゴシエイター

  ライアーソフト 定価:8800円  発売:2001年10月
本質的にギャグです。死人が出ますがあまり深刻ではありません

 ライアーソフトの18禁AVG。
 ライアーソフトといえば、馬鹿ゲーの旗手みたいなイメージがありますが、少々まとまりが悪い事が多いものの総合的に高い水準の作品を作ってきます。

 こんどは「ハードボイルド」なので主人公・根越栄太はバツイチ中年の私立探偵という非常に渋い設定のキャラです。もちろん、ライアーですから、そのまま済むわけはなく、恋愛交渉人(ラブネゴシエイター)という怪しげな事(こっちが本職らしい)をやっており、拳銃ではなく、ハンドスピーカーが獲物です。
 ヒロインにしても主人公の親友(殉職)の娘ってのはハードボイルドかもしれないし、某国の王女や別れた女房ってのは立ちまわり次第ではハードボイルドになれるかもしれませんが、幽霊娘やら同人娘、巫女さん風味の霊能力少女、アイドル歌手なんぞタジール・ハメットや北方謙三でもハードボイルドするのは不可能でしょう(笑)

 ストーリー的にはドタバタ活劇。本筋の話はそれなりにシリアスでちゃんとした話になっていて、それを徹底的にギャグで味付けした、といった感じで好印象。
 行間の雰囲気というのか、うける印象というのかが、なんとなく「バトルスキンパニック」(ガイナックス)に通じるものがあるような気がします。

 しかし、このゲーム、実に「危険」です。特に危ないのが自衛隊を支持基盤とするアイドル歌手「あなたのパセリちゃん*1」三島のぞみ。名前だけでも目眩がしそうですが、恐ろしい事に自衛隊を決起*2させてしまいます。なんか日本刀も持ってるし・・・スピーカーの付いている黒い車にのった怖いおじさん達に知られたら困ったことになるんじゃないですかね・・・
 その他、飛び降り自殺した女の子の幽霊が「岡田勇気」ってのもねぇ*3・・・

 *1 パセリちゃん:自衛隊のマスコットキャラクター(本当)。ブロッコリ国の村長の娘でパプリカ王国のピクルス王子の恋人という設定。各種グッズから機体マークまで、独自の方向でメディアミックス展開中。
 *2 1970年、作家の三島由紀夫が彼が主宰する民兵組織「盾の会」のメンバー3名と共に自衛隊東部方面総監部に乗り込み、自衛隊の決起を促したが果たせず割腹自殺した。三無・三矢・三島のいわゆる「三三クーデター『未遂』事件」のうち、脅威度は最も低かったが、実際に死人が出たのは本件だけ。
 *3 1986年、アイドル歌手の岡田有希子が飛び降り自殺。「ウェルテル効果」で青少年が自殺の大増加し社会問題になった。

 特徴的なギミックとしては「ネゴバトル」があります。ネゴシエイターというからには、相手を説得するのですが、3分割された台詞が3本あり、それぞれを選んでキーボードからタイプするという形で行われます。
 制限時間はあまりシビアではないし、難易度調整もできるのでタイプはあまり問題にならないのですが、文章は一部しか見えてないないので「正解」を得るには、あてすっぽうで選ぶ必要があります。
 推理とかタイピングとか頭とか技術を使うものならともかく、単なる乱数勝負、しかも2回目以降は意味をなさないというでのでは、話の流れが悪くなって鬱陶しいだけで、あまり成功しているシステムとは思えません。

 AVGシステムは並。必要な機能は一通りそろっていて、プラスアルファで「前の選択肢に戻る」なんてのもあるのですが、なんか使い勝手が悪い印象です。前作「サフィズムの舷窓」と同じ様なシステムの筈なんですが・・こっちの方がテキストの分量が多いから些細な不満が目に付くのでしょうかね。

 私的な評価は・・中の下。「まあ、こんなところでしょう」。
 登場してないキャラと知り合いだったりする変な現象が起きたり、必ず同じ場所でフリーズするような再現性の高いバグが残っていたりと完成度が低すぎます。
 ストーリーや雰囲気は良好でかなり楽しめたし、完成度といえばもっと酷いのはいくらでもありますから、「中の中」ぐらいは付けてもいいのかもしれませんが、非常に凝った初回特典〜ショップによって違うらしくソフマップは映画のパンフレットを模した小冊子。非常に良い出来〜もマイナスに働いて(こんなの作ってる暇があったら1つでもバグとれ!)この評価としました。


ラブ・ネゴシエイターと日本海軍

 明石亜美。主人公・根越栄太の別れた妻でテロ対策チームのエリート警察官。「ロリコン・ハードボイルド」と銘打ってる作品のヒロインにしてはエラく育ちすぎな気もします(笑)
 一応、「唯一の常識人」みたいな地位にありますが、あくまでも他と比較しての話で、平気で銃撃戦をするような人ではあります。

 <明石>は日本海軍には2代ありますが、2代目は工作艦。
 工作艦というのは損傷艦艇の修理や整備を行う「浮かぶ工廠」ですが、日本海軍は本質的に迎撃海軍であり、アメリカやイギリスのように大洋を超えて外地で長期間作戦する事はあまり重要視されておらず、必然的に工作艦の整備は遅れがちで、大正13年に捕獲商船改造の工作艦<関東>を座礁事故で失ってから昭和12年に旧式戦艦の<朝日>を編入するまの12年間、工作艦を保有しないという状態にありました。
 そんな中で建造された<明石>は米工作艦<メデューサ>を参考に計画された我が国唯一の専用工作艦でその処理能力はずば抜けて高く、連合艦隊の年間修理工数の3〜4割を負担する事さえ可能であり、太平洋戦争において日本海軍がトラック島を拠点に長期間に渡り南方で活動できたのは本艦の存在があった為といわれています。

 この艦は姉妹艦をもたない単艦です。なんで本艦を量産しなかったのか?という意見をよく聞きますが、そもそも日本海軍はマーシャル沖なり小笠原沖なりで決戦して決着をつける予定だったので前進基地を作る必要はあまり無いですし、長期戦に備えて本型を多数用意するぐらいなら、トラックやパラオの要塞化・工廠化を進める方が費用対効果の面から有効のような気もします。

明石
   ◆工作艦<明石>
    2本ある煙突のうち1本は艦内工場のボイラー用

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