Memories Off
 Memories Off

  KID 定価:6800円  発売:99年10月

 KIDのプレイステーション用アドベンチャーゲーム。

 KIDといえば、「輝く季節へ」(PC版タイトル「ONE」)で「音声以外の追加部分ことごとくゴミ」という素晴らしい移植を見せてくれたソフトハウスですが、今回はどうした加減か、素晴らしい作品でした。

 システム的には普通のノベル系の恋愛アドベンチャー。テキストはウィンドウ形式でボイス付きとまあ定番。読んだ文章スキップに加えて読んでない文章もスキップできる機能や画面のサムネイル表示がされるセーブも80ヶ所と問題なし。ただ、選択肢が出てる状態でバックスクロールできないのはどうにかして欲しいところです。

 ストーリーは恋人を失い、前に進めなくなっている主人公と何らかの問題をかかえている女の子が出会い、関係が深まるなかでお互いを救い出すという、メンタル面重視のお話で、「ONE」の系統に属すると思われる作品です。

 設定に関しては文句ナシ。手の込んだフィクション作品の宿命ともいえる「閉じた世界に多くの関係を詰めこみすぎた不自然さ」を感じない訳でもありませんが、非常に巧くキャラの関連を作っています。
 とくに「みなも」シナリオでは、主人公の元恋人とみなもがとんでもない関係で繋がっており、「もし、この設定が現実に私の身に起きたら、おそらく正気を維持できないだろうな・・・・それこそ永遠の世界に直行だ。」なんて思うぐらい痛かったです。
 ただ、演出がクドく、会話の堂々巡りなど、妙に素人くさい脚本が折角の設定にかなりのダメージを与えてしまっているのは非常に残念です。

 CGは綺麗だけど癖が少なく、塗りが少々地味なせいか、あまり印象が残らず、音楽もあっさり目、CVも安定。この辺がさびしいという評価もあるようですが、私的にはノベル系のメインはあくまでテキスト、CGやCVがあまり自己主張するのはどうかと思うので、この程度でいいと思います。

 導入では脚本の素人くささが興を削いでしまう部分もあるのですが、入ってしまえばよく作られた話の前に隠れるし、トータルのバランスもノベル系の作品として揃っているので、私的評価は「佳作+」(99年11月の時点で本年度5位)といったトコにしときます。

 萌えキャラは・・双海詩音ちゃん。親の都合で世界各国を転々として、最近、日本に戻ってきた女の子。クォーターで、かつて帰国したときにいじめられた事があり、それが心の傷となって今回の帰国では無関心の仮面を被っている。
 いわゆる「無表情系」とみせかておいて実は・・というのはある意味お約束のパターンではあるけど、そのギャップというのか、自分だけに見せる素顔とかいうのには惹かれます。

発見!日本海軍

 音羽かおる。明るく話好きな転校生。でも、明るい顔の裏側には・・・特にスポーツ万能というキャラじゃない筈なんですが、妙に活動的な印象を受けます。
 日本海軍の<音羽>は明治37年建造の巡洋艦。<新高><対馬>の設計を一部変更した準同型艦で、武装や装甲を減じ速力アップを図った通報巡洋艦(類別は三等巡洋艦)というべき艦。日露戦争で活躍しましたが、大正6年7月に三重県大王崎沖で座礁・沈没しました。音羽山は京都三十六峰のひとつに数えられる有名な山なんですが、何故か二代目は建造されませんでした。(<音羽>の由来は音羽山ではなく、音羽の滝であり、山名や河名の音羽を使うと混乱がおきるから避けた、という説もあります)

 霧島小夜美さん。地元の大学に通う大学生。腰痛で倒れた購買のおばちゃんのピンチヒッターとして登場します。少し天然の入ったお姉さんと定型キャラではあります。しかし、ここの購買は、胡瓜に蜂蜜をかけたものがはさまった『メロンパン』とかプリンに醤油をかけて焼いた『ウニパン』、ドリアンの入った『ドリアンパン』と常軌を逸したラインナップが魅力的(笑)
 日本海軍の<霧島>は大正2年竣工の巡洋戦艦。イギリスで建造された<金剛>を元に三菱長崎で建造した艦です。金剛型は太平洋戦争に参加した主力艦では最古参でしたが、高速を活かして機動部隊の護衛や地上砲撃に活躍に、日本で最も活躍した戦艦と言われています。昭和17年11月、第三次ソロモン海海戦(第二会戦)で米新鋭戦艦<ワシントン><サウスダコタ>と砲戦となり、<サウスダコタ>を撃破するものの<霧島>も自沈に追いこまれました。

 伊吹みなも。「髪の毛を両側で分けてリボンをつけた後輩」とくれば白痴系ロリキャラの定番なんですが、みなもちゃんは「病弱でひかえめ」でちょっと珍しい組合せ。
 しかし、最近、「病人」が流行なんでしょうか。まあ、「体が弱い」キャラってのは昔から山ほど居ましたが、最近はどうも生命に係わるぐらい状態が悪くなっているキャラが急増しているようにも思えます。(加奈、いろは、栞・・)
 まあ、生命が係わる方が感動的な話が作れるし、事故死より病死の方が話を引っ張れるのからでしょうか・・・「眼鏡」「ロリ」「天然」「ロボット」「メイド」「巫女さん」など多くの属性がありますが、そのうち「病人」なるジャンルも創設されたりして・・
 しかし、みなもシナリオは感動モノになりやすい病人モノでも異色の作品です。主人公の元恋人・彩花は主人公を迎えに行く途中に交通事故に遭って死んじゃってるのですが、実は彼女はみなもちゃんに臓器(たぶん骨髄)を移植する直前だった、というとんでもない設定。
 主人公は彩花の事故は自分のせいだと思っているのですが、その上、やっと前に踏み出して作った恋人まで同じ事故で失うとは・・・あんまりといえばあんまりすぎるストーリーで、少なくも自分に責任がある(と思っている)という点で加奈や栞より「痛い」です。

 日本海軍の<伊吹>は2隻。初代は明治42年竣工の装甲巡洋艦(後に巡洋戦艦)。第一次大戦ではオーストラリアやニュージーランドまでドイツの仮装巡洋艦<エムデン>を追撃したことで知られています。大正12年、ワシントン条約の成立により廃艦。
 2代目は改鈴谷型の巡洋艦。工事中に空母に改造となり、アイランド型でありながら飛行甲板を大きくとる工夫や航空機を多数搭載する工夫が加えられ、高角砲を減らして機銃を増設するなど戦訓が盛り込まれた有力艦となる予定でしたが未完成のまま終戦を迎えました。


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