Memories Off 2nd
 Memories Off 2nd

  KID 定価:6800円  発売:2001年10月
特定のシナリオで死人が出ます特定のシナリオで病人が出ます

 KIDのドリームキャスト/プレイステーション用の恋愛AVG。

 KIDといえば駄作の代名詞みたいな所がありましたが、着実に成長してゆき、いまや、私的には死にゲーの第一人者、最信頼ソフトハウスに成長しています。(私的ベストギャルゲーは「痕」、ベスト死にゲーは「加奈」ですが最近はリーフは方向性を見失っているようですし、DOやF&Cは多作モードに入って安定性ダウン中のようなので・・)

 今回は2年前に発売された「Memories Off」の続編。続編といっても舞台設定が同じで一部のサブキャラが出てきたり、蛇足的な部分でつながる他は特に関係はありません。
 もっとも、この蛇足的なつなげ方がかなり巧いので、前作をプレイしておいて損はないと思います。

 主人公の伊波健とメインヒロインの白河ほたるは半年前に付き合いはじめた恋人同士。主人公は部活を引退して自分の進むべき道を見失いがち、ほたるはピアノのコンクール出場に向けて練習中の夏休みに起きる切ないラブストーリーです。

 攻略可能ヒロインはほたる、ほたるの姉の静流、ほたるの親友で役者志望の巴、夏季講習の臨時講師のつばめ、バイト仲間で二重人格(?)の希、水泳部で男勝りの鷹菜乃の6人。
 「何考えているのか判らない奴担当」のつばめと設定が少々トリッキーな希が「飛び道具」といえますが、それほど極端なものではなく、むしろ恋人の姉とか親友といった、「普通じゃない普通の駒」を使って勝負するタイプの作品です。

 KIDは「痛い」話を得意とするだけに、「Memories Off」の唯笑や「ゆめのつばさ」の勇希、「Close to」の遊那のように主人公のことをずっと見てた、というようなキャラは今までも居ましたが、付き合う所までは行ってなかったり、忘れてたり非常事態だったりで「救い」があったのですが、今回は正面衝突だから救われません。
 ほたる以外はキャラ間の連結は殆どないのですが、ほたるは全キャラと確実に衝突します。誤解や焦燥から心が離れて、新しい出会いを見つけてしまい、偶然によって距離が開いてゆき・・・そして切ない別れ。修羅場だったり愁嘆場だったりしますが、いずれにせよ、ほたるは一途で健気な子だけに、とにかく「痛い」話になります。

 ゲーム期間は約1ヶ月ですが体感時間はうっとおしいほど長くなく、物足りないほど短くなくで丁度いい感じです。
 「Memories Off」ではテンポが悪く、会話のクドさなど、脚本の素人臭さが目立った部分もありましたが完全に解消され、かなり小気味良くストーリーが進展し、伏線や間の採り方の巧さも手伝って、飽きさせ無い展開に成功しています。
 選択肢は他のゲームに比べて少ない目で殆ど重要分岐のみ。特にヒロインの確定ルートに入ると終盤まで一気に進む印象があり、まさに「ノベル」という感じです。
 最近の18禁純愛系はHシーンが全くの蛇足で、Hシーンだけをカットすればコンシューマに移植できてしまえそうなものが多くありますが、この作品は逆。コンシューマ作品でありながら一人暮しの主人公の家にヒロインが泊まったり、嵐の漁師小屋で一夜をすごしたりとHシーンを入れても違和感がない、というかそういう関係になってないほうが不自然なシーンやら、ほたるが主人公を「奪回」にくるシーンのようにHシーンの方がしっくりきそうなシーンが何箇所もあります。
 だいたい、序盤、保健室で服を乾かしている間とか、主人公の家に泊まりにきている時とかの2人の落ち着いた言動からして、そういう関係でなかったら、それは2人とも「観葉植物並の朴念仁」って奴です。

 システム面では作を重ねるごと向上していったKIDのノベル系システムですが、いよいよ完成の域に達しています。まあ、ゲームシステムは努力と経験でなんとか出来る範囲が大きく、スケールメリットが出やすい部分ではありますが、実際に確実に進歩するのに成功している所は多くはありません。
 既読スキップ、強制スキップ、読み返し(音声付読み返し可)など全て完備。セーブ&ロードは通常32箇所、クイックロード16箇所、表示される情報はサムネイルとメッセージ、ゲーム中日付、章名、実日付で過不足なし。その他、重要分岐点やエンディング直前から再開可能なショートカットもついて至れりつくせりです。

 CGについても文句なし。しかし、ほたるの立ち絵の怪しげなポーズはToHeartのあかりに対抗したもんなんでしょうか?(笑)
 各キャラの髪型や色が似通っていて、発売前は雑誌記事のキャラ一覧を「表情集かと思った」なんて言われていましたが、実際にプレイしてみると、複数のキャラが同時に出てくる事自体すくなく、同時に出る時も飛世巴と相摩希のような混乱しそうな組み合わせでは出てこないので特に問題はありませんでした。
 私のプレイ環境はかなり大画面(約90インチ)なのでちょっとでもCGの処理の荒いところがあると引き伸ばされて目立ってしまうのですが、本作では全く違和感なし。前作「Close To」では若干画質が眠たくなるような部分があったのですが完全に解消され、「あれ?うちのプロジェクターってこんなに綺麗に出たっけ?なんか設定かえたかなぁ?」と思わずプロジェクターの設定画面を開いてしまったぐらい綺麗に出ます。

 私的な評価は・・上の上。文句無しの珠玉の名作。「切なさ」の一本勝負ゆえにストーリーとしては平凡なのでマジ泣きしたり、寝食を忘れるような「魂の名作」とまではいきませんが、シナリオ、演出、システム、CG、BGM、ボイスすべての点において高い水準でまとめきっており、トータルなゲームとして非常に高い位置にある作品といえます。
 難点を挙げるとすれば、シナリオ間の整合性が若干悪い点。別ルートを全く別の世界とみるか、起きなかった可能性とみるのかデザイン上の問題なのですが、この作品は、つばめEDがほたるED時のテキストに影響している「可能性」の部分と、ほたるのオーストリア留学の話がルートによって若干異なってくる「別の世界」の両方になっている点は世界構成にマイナス要素です。

 お気に入りは・・・白河ほたる。メインヒロイン。
 こういうプレインストール(初期好感度が高い)で一途で健気で直球勝負なキャラにはアンコンデショナル・サレンダーなのです。
ほたるが痛すぎるので、他のキャラを攻略する度にほたるエンディングか巴のノーマルエンドを見なおして、また別のキャラにとりかかるという時間のかかる事をしてしまいました(笑)
 属性的には相摩希ちゃんの方がヒット率が高いのですけどね・・


メモリーズオフ2ndと日本海軍

 南つばめ。主人公の通う高校でやってる夏季講習の臨時講師(現国)
 攻略可能キャラでは最年長ですが「何考えているのか判らない人」担当。性格上、終盤まで突っ込んだ部分がなく、他のキャラに比べて動きが少ない目のような気もしますが、バッドエンディングの「壮絶」さという点では作中最強です。

 <燕>は日本海軍には2代ありますが、2代目は大正12年計画・昭和4年3月竣工の我が国初の敷設艇。ちなみに敷設艇とは港湾などに防御用の機雷を敷設する小型艇ですが、<燕>は潜水艦除けの対潜捕獲網の敷設を特に考慮してあり、計画時は捕獲網艇に分類されていました。
 基準排水量450トン、速力19ノット。武装は8センチ高角砲と12ミリ機銃を各1門(新造時)。敷設能力は捕獲網3浬か機雷80個。
 補助艦艇に何でも取り付けたがる日本軍の持病が炸裂し、掃海具や爆雷投射機も装備、本質的に局地戦以外では使い道のない筈の艦種なのにある程度の外洋航行能力まで付いていました。本型はほぼ同時期に建造された第一号型掃海艇と似た部分が多いのですが、この第一号型掃海艇は掃海能力の他に機雷敷設能力も持っており、当時の日本海軍は「掃海艇で敷設した機雷を敷設艇で掃海する」という日本語への挑戦のような真似が可能でした。
 支那事変の頃から大陸に出動して長江や沿岸の作戦に従事、太平洋戦争開戦後は南方に進出して掃海から船団護衛まで幅広く活躍しています。

燕
   ◆敷設艇<燕>
    敷設作業を行うスペースを確保する為に主砲が一段高いのと船首楼が短いのが特徴

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