ＫＩＤのＤＣ用ノベル系恋愛ＡＶＧ。
　ただし、ＫＩＤのオリジナル作品ではなく、メディアワークスの読者参加企画がソースのメディアミックス作品です。
　経過的にはシスプリと似通っているのですが、出てきた物は全くの逆、対極にあるような作品でした。

　女子寮の管理人の主人公と寮生や寮の職員の物語。ヒロインは９歳から２０歳までの１２人。ただし小学生４人は個別ＥＤはなし。
　ゲーム期間は約１０ヶ月、毎月１回づつイベントで進行します。２人だけ必須イベントがあるキャラがありますが、基本的に累積好感度のみを参照するシステムです。
　一応、マップ移動型という事になっていますが、移動先にキャラが出るので問題はなく、むしろ強制発生する共通イベントが曲者で、発生する回数が多い上に微妙な選択肢なのでオンリープレイに徹している筈でも好感度が分散してしまって小学生ＥＤ（好感度不足時の救済ＥＤ）になることがあります。

　システムはＫＩＤの標準システム。おそらく、現時点で最も完成度の高いノベル系ＡＶＧシステムでセーブ数、セーブデータのサムネイル、選択肢毎の自動セーブ、音声付き読み返し、未読／強制の切換可能なスキップ、ショートカットによる途中開始など必要そうなものは悉く装備、ＣＧやフォントも綺麗でシステム的に死角はありません。

　最初にキャラクターありきの話の為、キャラクターの魅力が前面にでていて、ストーリーはそれを補完する程度の位置付け程度で奥行きが浅いのですが、陽性で嫌味が無いので非常に楽しく遊ぶ事ができます。
　しかし、キャラクターの魅力が設定より（作中の振るまいが魅力になるのではなく、設定時点で魅力を持っている）で話の奥行きが浅く湿気も乏しいと、いわゆる「萌え」に繋がらず「良い子だけれど萌えとは違う」とか「遊んでいて楽しいけれどハマれない」という状況に大変悔しい状況になっています。

　あと、少し気になったのは、本作は若干ながら薀蓄系のテイストがあるのですが、その「大和撫子」の用法がおかしかったり（日本女性全体を示す語として使う時はともかく、美徳として使う時は凛とした強さを清楚で控え目な態度の中に秘めた女性を指し、気の弱いだけの女性は和装していても大和撫子ではありません・・・撫子を始め日本女性に例えられる女郎花や雛菊は風雨に耐えて咲き香る野の花なのです）、敬語の使い方が変だったり、底の浅さが目立ちます。
　普通だと気にならない程度ですが、薀蓄系のシナリオを書くならもう少し勉強しましょう。

　あと、どうでもいい話ですけど、このソフト、実はジュネーブ条約違反です。ジュネーブ条約といっても国際運転免許の条約とか色々ありますが、これが違反しているのは世間一般でジュネーブ条約と言われている戦争犠牲者の保護を目的としたジュネーブ４条約のひとつで衛生兵や病院への攻撃を禁じた「戦地にある軍隊の傷者及び病者の状態の改善に関する1949年8月12日のジュネーブ条約」。
　このゲームのどこが戦争犯罪(になりうる）かというと・・・・かすみさんの制服。帽子と腕章に赤十字が入っていますが、これは条約で明確に禁止されており、日本でも禁固刑の罰則付きで国内法が制定されています。
　最近は日赤の啓蒙活動が功をなしているのか、あまり違反赤十字を見かけなくなったので、赤十字＝病院マークというイメージはなくなってきているのですが・・・古くさい雰囲気でも出そうとしたんでしょうかね・・

★戦地にある軍隊の傷者及び病者の状態の改善に関する1949年8月12日のジュネーブ条約（抄）
第５３条　公のものであると私のものであるとを問わず、個人、団体、商社又は会社でこの条約に基づいて使用の権利を与えられていないものが、「赤十字」若しくは「ジュネーブ十字」の標標若しくは名称又はそれを模倣した記章若しくは名称を使用することは、その使用の目的及び採用の日付のいかんを問わず、常に禁止する。

★赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律（抄）
第１条　白地赤十字の標章若しくは赤十字若しくはジュネーブ十字の名称又はこれらに類似する記章若しくは名称は、みだりにこれを用いてはならない。
第４条　第１条〔名称の使用の制限〕の規定に違反した者は、これを６箇月以下の禁固又は千円〔二万円〕以下の罰金に処する。

　私的な評価は・・中の中。システムはストレスが無いし、遊んでいて非常に楽しいのでもっと評価しても良いのですが、前述の如く萌え要素が薄いのが減点理由。いや、萌え要素が無くてもストーリー勝負ってのならいいのですが、本作は完全にキャラクター勝負の作品ですから・・・

　お気に入りは・・・うーん、どの娘も良い子なんですが、いまいち飛びぬけてきませんねぇ・・
　属性的には綾瀬美樹か星波ちはや、綾瀬美緒あたりですかね。

ミルキィ・シーズンと日本海軍

　星波ちはやちゃん。和装娘。前述の如く、作中では大和撫子と表現されていますが、清楚で控え目なのはそのとおりですが、気が弱すぎるんで、ちょっと違うと思います。
　でも、ＥＤの頃には大分改善されるので、もう少し頑張れば大和撫子にもなれるでしょう。

　通報艦＜千早＞。通報艦というのは無線が普及する前の時代に存在した艦種で艦隊間や艦隊＝根拠地間の連絡業務を担当する艦艇でした。連絡というと後方業務のようですが、場合によっては敵中を単艦で突っ切る事も考えられる事から、かなりの高速・重武装の優秀艦が充てられる「一線艦艇」のひとつであり、特に＜千早＞のような後期の艦はその傾向が顕著で後の大型駆逐艦や軽巡洋艦に通じるものがある、強力な戦闘艦として設計されています。
　＜千早＞は明治３４年竣工。日本海海戦にも第二艦隊の通報艦として参加、主力艦による砲戦に続く追撃戦には第一艦隊の通報艦＜龍田＞とコンビを組み、波浪により思うように行動できない駆逐艦・水雷艇部隊を尻目にロシア戦艦＜クニャージ・スワロフ＞に魚雷を命中させています。
　無線の急速な普及により通報の任を解かれ砲艦となりますが、中国や沿海州の警備に活躍、さらには練習船となり、昭和１４年まで活躍しました。

　通報艦＜千早＞
　無線設備の為、高いマストが特徴。後の軽巡に相当する艦だが、排水量は１２６３トンと駆逐艦なみ。