未来にキスを
 未来にキスを

  ohterwise/ビジュアルアーツ 定価:8800円  発売:2001年9月

 ビジュアルアーツグループの otherwise の18禁AVG。

 主人公は幼馴染の従妹(ヒロイン。主人公を「お兄ちゃん」と呼ぶ)の家に居候中。従妹の両親が2週間の旅行に出かける為にふたりっきりで過ごす事に・・・
 この導入に該当するギャルゲーで検索をかけると「該当する作品が多すぎます」みたいな感じでエラーが返って来るかもしれない、本当にお約束な導入。
 普通じゃないのは、プロローグでいきなり「お兄ちゃん、ボクのこと、奴隷にして?」ってきて首輪付きになったりする点。もっとも、このパターンも過去に全く例が無い訳ではなく、前述のよりは絞り込まれますが、まあある種のお約束ではあります。
 すると展開も「ナチュラル」のような純愛/鬼畜(調教)2ルート物かと思ってましたが、こちらは珍しい事に一本道、いちゃいちゃ物でした。

 最初は普通の純愛物に小道具として首輪を持ちこんだだけか・・まあ、最近の乱造状態をかんがみるに特色を出すためなら何でもアリかもな・・なんて思えましたが、プレイしてくと「自分の白紙委任」だとか「人が人を支配するうんぬん」と結構、ちゃんと難しい事を考えて作ってあり、全EDクリア後の追加シナリオでグランドテーマというべき結論が提示されます。
 私としては、「本当にそれでいいのか?」と思える内容でしたが、兎にも角にもグランドテーマが物語の最深部で首尾一貫しているという構成は評価できます。
 この手の作品で哲学的な事を導入すると、そっちが主になってしまいエンタテイメント作品としてイマイチになってしまう事が多々ありますが、この作品では追加シナリオ以外では「背骨」の存在をあまり感じさせる事無く普通の作品で通し、追加シナリオで一気に繋げる事に成功している点も好印象です。

 ゲームとしては極めて普通の作り。2週間のゲーム期間の間に女の子といちゃいちゃしたりする話。ほとんど毎日Hありなので純愛系と呼ぶのも何ですが、メインヒロインは首輪付きで学校でコトに及んだりするなど若干のアブノーマルなプレイが含まれるものの基本的に調教物というほどでもありません。
 進行は選択肢分岐型。悪質な分岐は無く、期間が比較的短いのとヒロインが4人しかいないので難易度は「下の上」〜「中の下」程度。
システムはビジュアルアーツ標準システム。読み返しの操作がかなり不便な他は特に問題は生じませんでした。

 私的な評価は・・中の上、良くできた作品だと思います。
 グランドテーマを少しボリューム不足なのと展開が急過ぎる点(特にサブヒロイン)が減点対象になる程度の本当に普通の話、グランドテーマはうまく繋げている点は凄いのですが、その内容は私的にはあまり気に入らず、後味も良くはなかったので加点は少し(私的な評価、ですから)でこの評価とします。

 お気に入りは・・・飛鳥井霞ちゃんですかね。メインのヒロインで、主人公の従妹にして幼馴染。何故か主人公を「お兄ちゃん」と呼ぶという、というお約束キャラ。
 妹キャラというより白痴系ロリキャラに近い部分もあるのですが、他の3人はそれ以上に狂ってますから・・
 まあ、属性云々以前に私は「プレインストール」なキャラ(ゲーム開始時点で既に陥ちているキャラ)には弱いんですけどね(笑)

未来にキスをと日本海軍

 飛鳥井霞。前述の通り、メインのヒロインです。
 「精神が不自由」一歩手前みたいな所があるキャラですが、その割に自分の白紙委任とか、その表現として「奴隷」という言葉を使うあたり、よくわからない謎なキャラ。(デザイナーが意図しているのかどうか不明)

 日本海軍の<霞>は駆逐艦。霞というのは水蒸気が一面に立ち込める気象現象で学術上では「霧」などと呼ばれるものですが、日本では秋に発生するのが「霧」、春に発生するのが「霞」、春でも夜に発生するのは「朧」と区別されており、つくづく昔の日本人は雅な人達だったと感心させられます。

 朝潮型駆逐艦<霞>は昭和14年6月28日の竣工。9番艦ですが建造工場の差が出たかの10番艦の<霰>の方が2ヶ月ほど先に竣工しています。(<霞>は民間の浦賀船渠製ですが<霰>は駆逐艦のメッカである舞鶴海軍工廠製)
 日本海軍では駆逐艦は原則として同型艦4隻で駆逐隊を編成しますが、朝潮型は白露型の計画変更というイリーガルな出自故に同型艦が10隻となった為、半端になった<霞>と<霰>は次の陽炎型の初期艦である<陽炎><不知火>と共に第18駆逐隊を編成しました。
 一般に駆逐艦を分類する時は設計の由来、軍縮条約や戦争中の呼称などから朝潮型と陽炎型で区切る事が多いようですが(本サイト内の「駆逐艦列伝」でもそうしてます)、性能や運用で考えると白露型と朝潮型の間で区切るのが正しいのかもしれません。

 ハワイ攻撃、ラバウル攻略、インド洋作戦、ミッドウェイ作戦などに参加。昭和17年7月に被雷して修理に約1年を要した事や、修理完了後は北方方面に配備された事から、日本駆逐艦としては珍しい事にソロモン海を経験していません。
 復帰後は北方、ルオット、小笠原などの輸送作戦に従事、さらに比島沖海戦、オルモック輸送、礼号、北号など戦争後半の絶望的な作戦も生き延びますが、昭和20年4月7日、いわゆる「水上特攻」として沖縄に向かう<大和><矢矧>などと共に九州沖に沈没しました。

霞
            朝潮型駆逐艦<霞>

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