星界の紋章と日本海軍


星界の紋章とは・・

 ハヤカワJAから出ている、SF界の気鋭、森岡浩之の長編SF小説で「星界の紋章1〜3」(完結) 「星界の戦記1」(続巻)が出ている。

 遥か未来、宇宙に進出した人類は5つの恒星間国家を築いていた。
 その最大の勢力は宇宙空間に適応すべく、遺伝子操作を行った人類の末裔アーヴにより支配される<アーヴによる人類帝国>が惑星マーティンを占領した時、惑星主席の息子・ジントの運命は大きく動きだした・・・

 とてつもなく広大で緻密な世界を見せるタイプの設定先行型で、本作も、非常に魅力的な設定を持つ反面、下手すれば非常に読みにくい話になる危険を内包しているが、主人公の地上人ジントと帝国の王女ラフィールの軽快なラブラブ話が見事に中和するのに成功している。ただし「星界の戦記」では、若干、ラブラブ話が強すぎる気もする。

 「星界の紋章」は主人公ジントが主計修技館(アーヴ語でケンルー・サゾイル。海軍式にいうなら海軍経理学校)に入学する為に便乗した巡察艦で知り合った王女ラフィールが歪んだ地方領主やら、敵軍に占領された惑星での冒険行。
 続編「星界の戦記」は数年後。突撃艦の艦長に昇進したラフィールと、同書記に任官したジントの戦い。

 表紙が赤井孝美なのを差し引いても、ハヤカワにしては軽く、ファンタジアやソノラマにしては重い微妙な線の作品であるが、本格的SFとライトSFがミックスした読みやすくて奥の深い、お薦めの作品ではある。



発見!日本海軍

 アーヴの星界軍と日本海軍は非常ににている。
 元々、アーヴという種族は日本人が作った事になっているようではあるが・・

 たとえば、アーヴ帝国の星界軍の士官(翔士)には勅任と泰任の2種類があるのだが、日本陸海軍も将官が勅任と佐官と尉官が泰任という区別があり全く同じ。
 ただし、アーヴは千翔長(大佐級?)以上が勅任だが、日本軍は少将以上が勅任であるので、若干、アーヴの方が甘いといえるか?

 また、星界軍の兵科は兵科たる翔士の他、主計、空挺、軍医、技術(軍匠、造兵、造船、造機、光子、航路)、警衛、法務、看護、軍楽に別れている。
 日本海軍の場合は兵科と機関、主計、軍医、技術(造兵、造船、造機、水路)、法務、歯科、薬剤、看護、軍楽である。
 陸戦部門たる空挺科に対応する科は日本海軍には存在しないが、これは星界軍が単一軍
である為の相違であると思われる。(憲兵部門と思われる警衛科も同じ)
 日本海軍との最大の相違は機関部門の扱いで、日本海軍は実情はどうあれ、制度には兵科と同等とされていたのに対し、星界軍では技術科で、扱いが低くなっている。

 さらに、星界軍では、小型艦の艦長は「マノワス」、大型艦の艦長は「サレール」で小型艦を集めた隊の司令も「サレール」である。
 日本海軍の場合、「艦長」と称するが、駆逐艦の艦長は正しくは「駆逐艦長」であり、大型の軍艦の「艦長」とは、責任も権限も大きく異なっていた。
 艦長は大佐で、乗員の人事権を持ち、補佐役は中佐または少佐の副長が付くが、駆逐艦長には部下の人事権は無く、専任の補佐役はつかず、兵科士官の最先任者が先任将校として駆逐艦長を補佐する。また、駆逐艦には軍医長や主計長は付かない。
 では、駆逐艦乗員の人事権はというと、これは駆逐艦が4隻集まって作る駆逐隊の司令(大佐)にあり、軍医科や主計科も、駆逐隊で統括して運用された。