俺的ギャルゲーベスト10または死屍累々

 独断と偏見で選ぶギャルゲーベスト10などと並べて見たのですが、良く見れば病みゲーや死にゲーが妙に多く死屍累々なので、そっち方面についても書いてみました。

 ギャルゲー以外では「くりぃむレモン」の「エチュード」などに「死ぬ寸前」のキャラは居ましたし、ギャルゲーでも杉本桜子(同級生2)が居た筈なのですが、なぜか後続は大して現れず、ここ数年に一気に噴出した感があります。
 最近急に増えた背景はやはりノベル形式の台頭でしょうが、現実の社会においても「五体不満足」「ファイト」「ナチュラル」といった障害や病気と闘うのではなく、受け入れた上で生活している人達の本がベストセラーになり、書いちゃいけない『タブー』が狭まっているというのもあるかもしれませんね。

 まあ、何にせよ、俺的99年度ランキング、ベスト10+特別賞2作の紹介です。

 なお、このランキングは私の趣味による独断と偏見なので苦情は受け付けません(笑)

 

これよりネタバレ抑止はいっさい行なっていません。ご注意ください。

1位 加奈 (D.O.)

 99年、俺的ベストギャルゲーは「加奈」。CGの書き分けに難があるとか、狙いすぎのストーリーだとか、考証がデタラメだとか、いろいろと言いたい事もありますが、ハマちゃったから私の負けです。一週間ぐらい、仕事も何も手につきませんでした。
 病弱な妹・加奈の闘病記。兄である主人公や周囲の人達を通じて「生命」を見つめ、受け入れる/闘うという、トラディショナルな闘病記スタイルのノヴェル作品です。
 所詮、「加奈」はフィクションで、どんなに言葉を選んでもノンフィクションの話の重さにはかなう術もありませんが、「理性は納得しても感情が納得できない『きれいな』悲劇」「他のキャラによる救済」「完全無欠のハッピーエンド」とノンフィクションでは絶対に実現できないマルチEDを巧く使うことで言葉の軽さを挽回できています。

 本作は加奈の闘病がメイン(テーマは禁断の愛らしいが)なので病人炸裂。
 ヒロインの藤堂加奈。先天性の腎不全(慢性腎炎)で透析と入退院を繰り返してきましたが、病状が急変し・・・というのが本作のメインストーリー。EDにより生体腎移植により治癒、多臓器不全で死亡、肺炎併発で死亡に分岐します。
 霧原須摩子。加奈の叔母。末期癌。数年前に乳癌を発症し手術、化学療法ともに効せず、積極的治療を放棄して終末医療に移り加奈と出会います。加奈に生命のあり方、終わり方を考えさせる切っ掛けを与えて死亡。
 霧原香奈。加奈の従姉。肝不全。未だ致命的な症状は発症しませんが、致死性のもので将来は無い。攻略可能キャラではありませんが、加奈のストーリー分岐により肝移植を受けて治癒するか、そのままに分岐します。

2位 こみっくパーティ (リーフ)

 俺的第2位は「こみっくパーティ」。我世の春を謳歌するリーフの東京進出第1作は同人誌作成恋愛SLGという非常にマニアックな作品でした。
 発売前も発売後も、いろいろと批判があり、私としても「貴族の義務」を果たせていない点で問題があると思うのですが、単独の作品としてみればシナリオ・CG・音楽いずれも極めて高い水準で安定しており、内輪ネタ・楽屋オチに終始したりする事もなくキチっと纏めた点は高評価できます。

 本作のキャラはみなさん、「病」が硬膏に入っちゃってるようですが、物理的な病人といえば隠しキャラの立川郁美。手術が必要なぐらいの心臓病ですが、隠しキャラなのであまり本編には係わっていません。EDで手術を受けますが本復はしないようです。
 あと、吃音や赤面症も精神病の一種に含めるなら桜井あさひなんかも病人に数えられますし、売上至上主義が行きつく所に行きついている大庭詠美あたりもある意味、精神を病んでいるとも言えるかもしれません。2人ともハッピーEDでは快癒します。

3位 とらいあんぐるハート2 (ジャニス)

 第3位「とらいあんぐるハート2」。女子寮の管理人のアルバイトをする事になった主人公が女子寮の住人たちとくっつくという、一見は普通の恋愛AVG。ただ、猫又やら超能力者やら赤飯前やら、とんでもない設定が特徴ですが基本のシステムや話をしっかり作ってあるので、「とんでもない部分」をうまく取りこんで「なんでこいつら平気やねん」を極めて自然に演出していました。
 SLG色を出そうとして失敗し、「盲腸」の部分がありますが、設定・物語・CG・システムともに相当高い水準でまとまっています。

 猫又とか、妖刀とか、いろんな人がいますが、病人なのはこの2人。
 仁村知佳リスティ・C・クロフォード遺伝子なんちゃら病とかいって超能力が使えます。思うに、これは病気じゃなくて進化のような気がするんですがね・・・

4位 Kanon (KEY)

 俺的第4位「Kanon」。北の街で起こった「奇跡」を主軸に、「夢」とか「想い」とか少々哲学的なテーマを扱ったノヴェル形式のAVGで、系統的に「ONE」の後継というべき作品です。
 「ONE」で成功した土台をしっかり活かす一方で理不尽な選択肢などを排除し、物語もわかりやすくなり、うまく上積みを積んだ後継作品かくあるべしみたいな作品に仕上がっていますが、「ONE」の延長から抜けられていないという弊害も出ています。

 美坂栞。「なんだか難しい名前の病気」で残り数週間の生命。症状から血液疾患のような気がします。
 病気じゃないですが、7年前に木から落ちて植物人間状態生霊になってうろついている物語のキーパーソンの月宮あゆ、同じく病気じゃないですが生命と引き換えに人間の姿をとる人魚姫状態の狐の真琴交通事故できわどいところにいく水瀬秋子(真雪の母親)などがいますが、ハッピーEDルートだと、それぞれ奇跡の力により本復します。(真琴はちょっと判らんですが・・)

5位 メモリーズオフ (KID)

 俺的5位「メモリーズオフ」。「ONE」のPS移植では「追加部分ことごとく蛇足」という素晴らしい移植をみせ、そこがONEの系統の作品を作ったもんだから、どんなに恐ろしい作品になるかと期待していたら、かなりの名作だったという不思議な作品。
 恋人を交通事故で失った主人公が「癒される」ノヴェル系の作品です。この手の作品としては致命的な事にテキストのテンポが悪い妙に素人くさい演出が目立ちますが、設定の巧さがそれらを補い、荒削りながら光る作品に仕上がっています。

 病人は伊吹みなも。病名は明言されませんが、たぶん慢性白血病(急性転化)。栞や加奈と違い、奇跡や数百〜1万分の1の偶然(白血球型が非縁故で一致する確率)がおきない「現実」なEDが印象的でした。

6位 蒼刻ノ夜想曲 (PL+US)

 PL+USデビュー作「蒼刻ノ夜想曲」。デビュー作といっても、Tacticsと兄弟にあたるブランドで、新興ソフトハウスという訳ではないようです。
 ひとことで言えば「痕」の亜流のノヴェル系AVG。亜流ではありますが、完成度の高さはなかなで、「ノスフェラトゥ」を「エルクゥ」になおせば「痕2」って書いてあっても「人数が増えたせいか、リーフもちょと芸風が変わったかな」ぐらいで済むかもしれません(笑)

 本作には病人は出てきません。メインヒロインのルミ記憶喪失ですが、その原因は謎のままです。
 死人の方はルミが首をもがれたり刺されたりします。実はルミルートに入るとルミは助からず、ハッピーEDは別ヒロインのルートにあるちょっと変わった作りです。
 ヒロイン以外ではが主人公に射殺されたり、アイシャに刺殺されたり、相打ちになったりし、灘の手先の雑魚ハンターがルミに折りたたまれたり灘に殺されたりします。また、ルミルートでは主人公の親友の裕也殺害されたりします。

7位 樹木姫 (デザイア)

 不治の病に侵された財閥の総帥、陸の孤島、メイドさんとくれば陵辱モノの定番ですが、中身は非常にしっかりしたサスペンスAVGでした。
 システムやCGは十人並ですし、ストーリーも抜群に奇抜という訳ではないのですが、よく練られたシナリオは珠玉と呼ぶにふさわしいものでした。

 病人は主人公の六角太一謎の奇病で物語の舞台となる扶桑の森を離れては生きられない体。冷凍野菜並の朴念仁か、発情期のケダモノの両極端に走るギャルゲーの主人公の中では抜群に成熟した「大人」なキャラです。
 ヒロインはメイドさん3人(清葉雛子みく)と秘書1名(あざみ)。いずれも健康ですが、それぞれのバッドEDでは殺害されるor自殺します。

8位 ときめきメモリアル2 (コナミ)

 恋愛SLGの代名詞というべきメガヒット作の続編。システムなどは大きな変化はありませんが、高い技術力とたくみな演出に裏打ちされた確実な上積みを行なった非常に高い水準で纏まった手堅い作品に仕上がっています。
 目新しさはあまりありませんが、昨今の時流に乗ってヒロインを難攻不落の「高嶺の花」から身近な「野に咲く花」に切り替えてくるあたりも流石で安心して遊べる作品に仕上がっています。

 本作は隠しキャラなどがあれば知りませんが、とりあえずは全員健康。いやぁ、健康って素晴らしいですね!

9位 トインクルデビュー (フェアリーテール)

 フェアリーテールの作品。南の島のタレント養成所に赴いて未来のスターをスカウトするというお話で、システム的にはありがちな恋愛SLGです。
 シナリオ、システム、CG、音楽ともに高い水準でキッチリ纏め、プレイアビリティも良い、老舗らしい優良な作品です。

 本作は病人・死人は無し。障害者(怪我人)として音羽早苗。ダンサーとして将来を嘱望されていましたが、怪我で断念。日常生活に特に支障は無く、現在は寮の寮長を務めています。

10位 終末の過ごし方 (アボガドパワーズ)

 「今週末には世界が滅びる」という設定と「登場人物全員メガネ!」という不思議なウリのノヴェル系のAVG。
 テーマの部分からしてチグハグなのですが、内容もそれに劣らずチグハグで魅力的なキャラの設定、綺麗なCG、淡々としているけれど読めるテキスト、MMX効果など、単品では軽く合格点をクリアしておきながら、トータルでは極めて低い水準の印象しか受けない非常に勿体無い作品でした。

 本作の病人は大村いろは。感情を表に出さず、何を考えているか判らない「無感情系」あるいは「無愛想系」のキャラです。この手のキャラは最近の定番で、中には何の説明もなく無愛想なだけのキャラもありますが、彼女は心臓のクロックジェネレータが逝っちゃってる洞機能不全(不整脈)だというのは合理的な説明です。(激昂すると命が危ないから)
 その後については、この話がそもそも「世界滅亡」直前の話なので特に言及はされていません。

特別賞 絶望 (スタジオメビウス)

 特別賞1作目は「絶望」。諸般の事情などで他の作品と統合されたり、発売が遅れに遅れた為、『発売が絶望』などと下手なシャレまで出まわっていましたが、なんとか発売にこぎつけました。
 余りにストレートなストーリーと展開に批評の声も多かったですが、『ヤルだけゲーム』の中で抜群のクォリティを誇っており、やはり99年を代表する作品のひとつに数えるべきでしょう。

 本作の病人は田中亜紀。病気が治って学校に通える日を夢見る薄幸の美少女。どうみても小学生か中学生ですが、大人の事情により18歳という事になっています。病名は不明ですが、衰弱系の病気のようです。EDによっては秘伝の薬で治癒します。(主人公が憑依した状態で、ですが・・)
 本作の場合、病気より主人公や主人公の手下、あるいは主人公が憑依したヒロインにより殺されるケースにより死屍累々です。攻略キャラは監禁して陵辱を繰り返せばそのうち衰弱死しますし(終盤にしか監禁できないキャラは衰弱死には追いこめないかも)、肝試しにやってきた男子生徒3名もサクっと撲殺です。また、EDでも両親や雇い主、結婚相手などを爆殺したり謀殺を計画するものが多くあります。

特別賞 WoRKs Doll (TOPCAT)

 特別賞2作目は「WoRKs Doll」。一時期大ヒットしたロボット育成モノですが、AI育成部分に軸足の置かれた点が他の作品と大きく異なるところでした。
 往年の迷作「リトルコンピュータピープル」を彷彿させる一風変わったシステムが印象的でそれなりに楽しめましたが、シナリオ本編に「とってつけた感」があったのはいただけませんでした。
 ノヴェル系や安易なシステムに走る作品の多い中、新しい「ゲーム」を作ろうとした点を評価して99年度特別賞。

 本作は病人は居ませんが、育成するロボット(亜人形という)は10日〜30日の寿命があり、それまでにリセットしないといけないという点で「リーチ」がかかっており、病人系に近いものがあります。