月陽炎
 月陽炎

  すたじおみりす 定価:8800円  発売:2001年10月
ほぼ全てのシナリオで主要キャラに死人が出ます。対人恐怖症や異形の血(リーチ付き)など常に「病」が存在します。

 すたじおみりすの18禁ノベル系AVG。
 同人ソフトに近いテイストで完成度が非常に低く、「趣味と商売の違い」について説教のひとつも垂れてやりたい感じのあった前作に比べ、しっかりした作りの作品に仕上がっています。

 時代は大正時代。神社の息子で神職を志す主人公が父親から遠縁の神社の手伝い(シナリオによっては事件の調査)を命じられてやってきた街で起こった物語です。

 大正時代が舞台の「時代」ものですが、残念ながらあまり大正っぽくはありません。まあ、時代考証がどうとかいう話じゃないし、物語のほとんどは神社の中で紡がれているので、大正だろうが昭和だろうがあまり差が出にくいのですけどね。
 一般に大正時代は時代情緒溢れる上に明治や昭和初期に比べて比較的現代に近い部分もあるのでフィクションとしては扱いやすい時代なのですが、いくつかの風習ではやっぱり決定的に違っているのです。
 たとえばパンツ。日本女性で初めてパンツを導入したのは明治4年に岩倉使節団と共に渡米した津田梅子や山川捨松ら女子留学生ではないかといわれていますが、一般に普及したのは少なくと昭和8年の白木屋の火災、おそらくはもう少しあと、昭和10年代中期頃の物資困窮ともんぺの普及によるものだといわれていまして、大正期に和装の女性がパンツを履くのはちょっとありえない話です。
 また女子の教育という点も大きく異なります。女子の社会進出などが華やかになり女子の教育も小学校の次の女学校ぐらいまでは都市部や裕福な家では珍しくなくなりつつありましたが、その次となると文部省内でさえ「女子の高等教育を普及させる事は民族の衰退に繋がる」などという意見が飛び出す程で、大正後半の頃までは公立では東京や奈良の高等女子師範学校と福岡、大阪の女子専門学校があったぐらい。私学の専門教育を含めても前述の津田梅子の女子英学塾、吉岡彌生の東京女医学校、高木兼寛の東京慈恵会医院附属看護婦教育所など先進的な人達の努力でかろうじて目鼻がついた程度のもので、少なくともどこにでもあるような学校ではありませんでした。
 美月や双葉の年齢は明記されていませんが、ジュネーブ条約ソフ倫の規定により18歳以上という事になるのですが、彼女達は何になるつもりで何の学校に行ってるんでしょうかね(笑)

 人の血や精気を吸う「墜ち神」にまつわるスタンダートな伝奇物ですが、うまいことツボを押さえているのと作りが丁寧なので好感の持てる内容に仕上がっています。
 攻略可能ヒロインは5人。対人恐怖症の巫女さん、口も手も出る袴女がメインヒロイン、凛としているけど実は脆い巫女さんと一児の母、探偵に憧れる洋装の「お兄ちゃん」娘の3人がサブヒロイン。明かに狙った属性攻撃ですが作りがしっかりしているので中々魅力的なキャラに仕上がっています。ただ、ほとんどのEDでは、EDキャラ以外のヒロインは死亡したりする事が多く、魅力的なキャラだけに「しんどい」思いをする事もあります(笑)

 ゲームシステムはスタンダートな作り。ED到達により分岐の増えるマルチストーリーですが、そのフラグを「アイテム」という形で表現したり、タイトル画面が変化する事で到達ED数などを表現するなど、割と気を使っています。
 これらのギミックがどれだけ役に立っているかは疑問も残りますが、読み返しやセーブ/ロードなどの基本機能もしっかりしてますから充分に合格点には達しています。

 私的な評価は・・上の下。たいへん良くできた作品です。
 属性攻撃に頼る限り、この辺りが限界のような気もしますが、ここから上を目指すとなると製作者と組織運営者にそれなりの才能が要求され、一歩間違えるとロクでも無い事になりますから、これはこれで良いような気がします。
 前作に比べて嘘みたいな出来なので次回作も期待が持てますが、まだ旧敵国条項は撤回しないでおきます(笑)

 お気に入りは・・・有馬柚鈴。銀髪の巫女さん、対人恐怖症。
 対人恐怖症を克服するという「普通」のストーリーでひっぱって後半の伝奇部分に繋いでおり、「本筋」という点ではどうかと思いますが、芋かりんとうや台所Hシーンなど「萌え」のツボを巧みに突いてくる点では有効打。
 話の本筋という点ではもう一人のメインヒロイン、美月の方が近いのですが、属性ヒット率から柚鈴の勝ち。あと、探偵娘の双葉にも引かれたのですが、シナリオの薄さ(内容・量ともにおまけシナリオの域を出ていない)が敗因となりました。


月陽炎と日本海軍

 タイトルから駆逐艦<陽炎>(2代目)。私が最も愛する艦のひとつです。
 排水量2000トンのバランスの良い船体に12.7センチ砲6門と61センチ魚雷発射管8門の重武装を搭載、もちろん魚雷は大破壊力・高速・長射程を誇り「欧米の物の5倍の威力」と称された酸素魚雷で次発装填装置も装備。さらに35ノットの高速と18ノットで5000浬の長航続距離を実現した日本海軍が追い求めた艦隊型駆逐艦の精華というべきシリーズのネームシップです。
 昭和14年11月6日に舞鶴工廠で竣工。太平洋戦争では常に第一線で活躍。東はハワイ、西はセイロン、北はキスカ、南はソロモンと文字通り太平洋を縦横に駆け回ります。
 陽炎型や準同型の夕雲型は水雷戦の為だけに磨きぬかれた珠ゆえに、太平洋戦争で駆逐艦に要求された対空・対潜能力は不足気味で苦戦を強いられますが、昭和17年11月30日のルンガ沖夜戦ではその本領を存分に発揮、彼女を含めた8隻の駆逐艦でガダルカナルに物資を輸送中に重巡4隻を主力とする敵艦隊の伏せを受けるという全滅しても不思議でない最悪の状態を<高波>1隻の喪失で切りぬけ、米重巡<ノーザンプトン>を返り討ちにし、残り3隻の重巡も撃破するという水雷戦史に残る大勝利を収めています。
 昭和18年5月8日、クラ湾で触雷して航行不能となった所を米軍機に襲われ無念の最期を遂げました。

陽炎
     ◆駆逐艦<陽炎> 全く隙のない美しい艦です

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