With Youと日本海軍



With You〜みつめていたい〜とは..

 ギャルゲーの老舗、カクテルソフトのパソコン版18禁恋愛AVG。
 「幾つもの想いを紡ぎ合い、僕達の『絆』がうまれる。」

 ゲームは時々選択肢の出てくるイベント選択式の最近主流(?)のノベル系AVGです。
 幼い頃に海外に引っ越した幼馴染の初恋の娘「真奈美」が帰国し、ずっと自分を見ててくれた、もうひとりの幼馴染「菜織」との関係にも変化が・・・
 ドロドロの三角関係かと身構えますが、序盤の行動で真奈美/菜織のどちらかのルートに分岐し、選ばれなかった方は自然に身を引くシナリオになっているので、インパクトは弱いですが、苦しい思いをすることもありません。

 悪評の高かったADMシステムを捨てて採用した独自システムは抜群。小気味よくサクサク動くシステムはローエンドからもはみ出しつつあるP5−120/4倍速CD−ROMでも全くストレスを感じさせない素晴らしいものです。
 音楽も秀逸、しかも各音源用にアレンジされており、「xx音源なら綺麗だけど、xx音源では変」なんて事もない。 CGについては元々、綺麗な事で定評のあるソフトハウス。 キャラクターも主役・脇役ともに魅力があり、声も巧い。個々のシチュエーションも魅力たっぷり。
 こんだけ揃っていれば名作間違いなしの筈なんだけど、なぜか物足りない。
 老舗だけに手堅く纏まりすぎているのも原因なんでしょうが、妙なチグハグ感も感じました。

 マニュアルによると、発売までかなり紆余曲折があって設定からストーリーから大きく変わっているようで、料理でも途中で味付けを変えるとロクな事になりませんが、この作品もなんか、そんな感じがします。
 巫女服、メイド服、妹、眼鏡、幼馴染などもケチャップやカレー粉(料理で味付けを変える最終手段)ほどの威力はないようです。(人によってはあるでしょうが)

 元々、真奈美1本だったのが、紆余曲折の末に菜織がヒロインに昇格してダブルヒロインになったせいか、シナリオのボリュームに偏りが目立ちます。
 しかも、菜織ルートは基本的に日常の延長。少々、強い目のイベントを入れないと印象が薄くなってしまのに、強いイベントが無い。
 逆に真奈美ルートは真奈美自身が非日常なのに、本筋である「絆」が前面に出てミャンマーの精霊まで出てくるファンタジー系のイベントまであり、片より感を強くしてしまっています。
 いっそ、菜織ルートでは本格的に三角関係にして、そこから本題である「絆」に進めば、それなりにバランスの取れたボリュームになったんじゃないでしょうか。

 まあ、この辺は些末なことで、全体で見れば非常に良くできた98年度を代表する佳作だと思います。

 なお、お気に入りは氷川菜織。神社屋さんの娘でいつも主人公を見守り続けてきた幼馴染。
 巫女服にバッシュという、ちょっと珍しい格好のほか「メイド服」を着てみたりと卑怯なキャラではあります。
 でも、私は別に「巫女さん」とか「メイド服」などのその手の属性はなく、属性的にはむしろ、眼鏡でおとなし目の真奈美の方が近いと思うのですが、主人公を思う気持ちで菜織萌えです。

 最後に1言、「Piaキャロットへようそこ2」の時もそうでしたが、発売日(金曜日)の夕方には品薄ってのはちょっと・・・
 初回限定版がペイできないというのなら、通常版と混ぜても良いから、予約を忘れても早退しないでも買えるようにしといてほしいもんです(笑)。
 まあ、今回は次の週には通常版が出たから良いけど・・・しかし主題歌の2番とカラオケと70MB以上あるポスター用のCG画像2枚で1万4千円って狂ってますよね・・・
 (初回限定版が2万円で売られていたらしい。定価は初回/通常版とも7980円、日本橋の普通の店での実売は6000円前後。ちなみに初回版と通常版の違いはオマケCDの有無でその中身でゲームCDに入ってないのは上の3点だけ・・・)


発見!日本海軍

 氷川菜織。上でも書きましたが、神社の娘。
 しかし、神社屋さんが、娘に「なおり」なんて名前つけていいもんでしょうか・・・伊勢系−斎宮とか−だと「なおる」って「死ぬ」の忌み言葉では・・・

 日本海軍の氷川は特設病院船<氷川丸>。
 昭和5年にシアトル航路に投入された日本郵船の1万トンパシフィック・オーシャンライナー。同航路に就役した妹の<日枝丸><平安丸>、異母妹というべきサンフランシスコ航路の<浅間丸><龍田丸><秩父丸>と共に日本海運の黄金期を支えました。
 昭和16年、海軍に徴傭、特設病院船となり太平洋を縦横に駆け巡り、1万余人の戦傷・戦病者を輸送しました。
 戦後は我が国最大(というか唯一)の外航客船として引揚輸送、内地での物資輸送、不定期航路を経て昭和28年にシアトル航路に復帰、昭和35年に引退するまで、戦前戦後を通じ248回、太平洋を横断し2万5千人の乗客を輸送した、我が国の海運史上に残る功労船です。
 引退後は横浜港で係留・展示され、68歳(平成8年現在)とは思えない、元気な姿を山下公園桟橋で見ることができます。
 このゲーム、横浜が舞台なので、本当に元ネタなのかも知れません。
 <氷川丸>については「氷川丸70年の航跡」として概歴を書いてみました。興味の有る人はどうぞ。

 ついでに、このゲームに登場するミャンマーと日本の関りについて少し...
 ミャンマー連邦、元ビルマ連邦は教科書や地図帳では1948年にイギリスから独立した事になっていますが、実は5年前の1943年8月1日、ボー・モウを国家代表とする「ビルマ国」が独立を宣言、同時に英米に対し宣戦布告を行ない第二次世界大戦に参戦しています。
 もちろん、背後には日本が居て独立の口火を切った「ビルマ義勇軍」の最高指揮官で”雷帝”ボウ・モウジョ(民衆を救う伝説の王子)を名乗る人物の正体は鈴木敬司という陸軍大佐だったりしています。
 1945年、日本の敗色が濃厚となるとアウンサン将軍率いるビルマ国軍が反乱を起こし、ボー・モウら親日派は日本軍と共にタイに脱出、わずか2年で「ビルマ国」は滅亡。戦後、自由インドやフィリピンなど他の「日本の同盟国」と同様、その名は歴史から抹消されています。
 ちなみにミャンマーは戦後、商船に復帰した<氷川丸>の最初の目的地でもあります。


        シアトル航路時代の<氷川丸>