北洋で漁業保護にあたっていた第一駆逐隊の峯風型が老朽化し、また軍縮条約の影響もあり、その代艦として昭和12年度計画により建造された艦。

 艦隊決戦に供される正面艦ではない為、予算の獲得は至難を極め、足掛け5年がかりで、排水量も1200トンから800トンに減じ、備砲も廃艦の物を再利用するなど、涙ぐましい努力の末に建造にこぎつけた。
 当然、設計も実用本意のシンプルな艦となる筈であったが、当時、艦政本部は多忙の極みにあり、民間育成の意味も込めて三菱重工が設計にあたる事となった。
 ところが、初めての設計に張り切りすぎた為、荒天下でも上甲板に出る事無く艦上を移動する事ができる長甲板室の採用や艦艇構造の船体、解氷装置、暖房装置など、妙に凝った複雑な艦となってしまった部分がある。

 完成後は開戦により、いきなり南方に配備された艦もある。最初からある程度は南方での活動も考慮して設計されていたが、やはり北洋警備艦で、かなり暑い艦だったらしい。
 後の量産型護衛艦艇のモデルタイプとされた事から「居住性・生産性ともに劣悪」のレッテルを貼られてしまうが、北洋向けの艦艇を南洋で使う事や、本来、4隻だけの補助艦を量産艦のモデルにする事に問題があり、戦時の南方護衛艦としては不適であったかもしれないが、平時の北洋警備艦としては武装・居住性・操縦性に優れた優秀艦であった。


占守型の戦い:ブラックホール搭載艦? 〜占守〜

 昭和15年の海軍艦艇一覧表には、占守型の基準排水量は「8600トン」と1桁間違えて記載されている。
 当時、「海防艦」には旧式の装甲巡洋艦等、1万トン前後の艦が多かった為、誰かが「直して」しまったのであろうが、全長や全幅は間違えてなかった為、「何で作ればそんなに重くなるんだ?」という事になってしまう。
 なお、海軍の艦艇一覧表でここまで大きなミスは他には存在していない。


甲型型要目(新造時)

 名  称   甲型(占守型)
 ネームシップ  占守
 建造時期  昭和15年6月30日〜昭和16年2月15日
 建 造 数 4隻
 基準排水量  860トン
 全  長   78mm
 水 線 幅   9.1m
 吃  水   3.05m
 主  機   艦本式22号X型ディーゼル2基
 推 進 軸 2軸
 主  缶   −−
 出  力   4500馬力
  計画速力  19.7ノット
 航 続 力 16ノットで8000浬
 燃料搭載量  重油220トン
 乗  員   147名
 兵  装   12.7センチ45口径単装砲 3基
 25ミリ連装機銃 2基
 爆雷18個(投射機1基、投下台6台 

同型艦:占守、国後、八丈、石垣