特設巡洋艦

赤城丸・浅香丸・粟田丸（日本郵船）

　第二次船舶助成施設により昭和１１〜１２年に建造された、いわゆる「Ａ型貨物船」。
　Ａ型船は三島型の船体に高出力ディーゼルを搭載。スペリー社のジャイロコンパスや炭酸ガス消火装置など最新の設備を備えた優秀船として欧州航路リバプール線に投入される予定で建造されたが、東航世界一周航路の開設に伴い、全船ともそちらに投入された。
　その後、第二次欧州大戦の勃発により南米航路に転用、昭和１６年に入ると赤城丸、浅香丸、粟田丸が徴用され、特設巡洋艦に改造された。
　３隻は北方警備を担当する第五艦隊第２２戦隊に配備され、漁船徴用の監視艇群の母艦として活躍した。なお、「ドゥーリットル東京空襲」で第２３日東丸が＜敵機動部隊発見＞の無電を発したのは有名であるが、この無電を中継したのは＜粟田丸＞であった。
　昭和１８年、北方の戦線縮小と輸送船不足により特設巡洋艦の任を解かれ特設運送船となり輸送任務についたが、＜粟田丸＞は昭和１８年１０月２２日に宮古島沖で雷撃により、＜赤城丸＞も昭和１９年２月１７日のトラック空襲で、残る＜浅香丸＞も昭和１９年１０月１２日の台湾空襲で沈没した。

総トン数　約７４００トン／全長　１４５．８ｍ／機関　ディーゼル８０００馬力／速力　１９ノット／兵装　１４センチ単装砲＊４、１３ミリ単装機銃＊２、５３センチ連装魚雷発射管＊２（粟田丸、浅香丸）　１５センチ単装砲＊５、８センチ単装高角砲＊１、７．７ミリ単装機銃＊２、水上偵察機２機（赤城丸）

報国丸・愛国丸・護国丸（大阪商船）

　優秀船舶建造助成施設により大阪商船がアフリカ航路向けに建造した高速貨客船で＜ぶらじる丸＞＜あるぜんちな丸＞に次ぐ大阪商船期待の優秀船だった。
　どっちかといえば客船よりの日本郵船の主力船に比べ、大阪商船の主力船は貨物と移民輸送を主眼としており、報国丸型も貨物搭載量や三等船客の定員が多いのが特徴だった。
　予定のアフリカ航路には＜報国丸＞が１回だけ就航したのみで後は大連航路となり、＜愛国丸＞＜護国丸＞に至っては商船としては就役しなかった。
　＜報国丸＞と＜愛国丸＞は第２４戦隊を編成、通商破壊部隊として南太平洋・インド洋に展開し蘭タンカー＜ゼノタ＞、米貨物船＜セント・ヴィンセント＞などを拿捕または撃沈する戦果を上げが、＜報国丸＞は昭和１７年１１月、蘭タンカー＜オンディナ＞と交戦、被弾した際に潜水艦補給用に搭載していた魚雷が誘爆するという不運にみまわれ沈没した。
　＜報国丸＞沈没後、＜愛国丸＞と新たに戦列に加わった＜護国丸＞は特設巡洋艦籍のまま輸送任務に使用され、昭和１８年１０月には正式に特設輸送船に転籍となった。
　昭和１９年２月１６日、トラック空襲で＜愛国丸＞が沈没。＜護国丸＞も１１月７日に古志岐島沖で米潜の雷撃を受けて沈没した。

総トン数　約１０４３８トン／全長　１６０．８ｍ／機関　ディーゼル１３６００馬力／速力　２０．９ノット／兵装　１４センチ単装砲＊８、１３ミリ単装機銃＊２、５３センチ連装魚雷発射管＊２、水上偵察機１（護国丸は１４センチ砲を装備せず１５センチ単装砲＊８）
　　報国丸型の解説

能代丸（日本郵船）

　第一次船舶助成施設により建造された、いわゆる「Ｎ型貨物船」。
　昭和９年竣工。竣工後はニューヨーク航路で活躍した。
　昭和１６年９月、徴用。特設巡洋艦に改装され、横須賀警備戦隊の旗艦となる。
　昭和１７年８月、輸送船の不足に伴い運送船に転籍となり南方での輸送に従事。
　昭和１８年１月１６日にラバウルで空襲、１月２５日にショートランドで艦砲射撃、３月１３日に雷撃、さらに昭和１９年にも雷撃を受けるが強運を発揮し、大事にはいたらなかった。しかし、強運もそこまでで昭和１９年９月２４日、マニラ入港中に空襲を受け爆弾３発が命中し沈没した。

総トン数　７１８４トン／全長　１４５．５ｍ／機関　ディーゼル６７００馬力／速力　１８．５ノット／兵装　１５センチ単装砲＊４、８センチ単装高角砲＊１、７．７ミリ単装機銃＊２、水上偵察機２機

特設巡洋艦一覧