蒼い海のトリスティア
 蒼い海のトリスティア

  工画堂スタジオ/くまさんチーム 定価:オープン  発売:2002年7月
展開によっては主要キャラの何人かが死にます。サブヒロインと呼んでも差し支えないかとも思いますが、女性視点のゲームなのでヒロイン扱いにはせず3種としました。主要キャラが病人で、そのイベントもあります。死にゲー格付けと同じくヒロイン扱いにはせず3種とします。

 もはや国内では少なくなってしまった、一般PC作品を作り続ける工画堂スタジオのSLG。
 「エンジェリックセレナーデ」(製作チームは違います)で素材の良さを徹底的に殺す完成度の低い代物を作り、おまけにそのバグフィックスで見苦しい事をした為に私的評価が急降下した工画堂ですが、今回はバグ付ながら、それなりに遊べる作品でした。

 11年前にドラゴンの襲撃を受けて壊滅した海上都市トリスティアが再建の希望を託し稀代の発明家にして都市プランナーのプロスペロ・フランカを招聘します。が、トリスティアにやってきたのはプロスペロの孫娘、14歳のナノカ・フランカでした。
 という導入。プレイヤーは工房士ナノカ・フランカとなり、様々な発明を行い、その発明品を各商店に卸す事で街の発展を図ろうというものです。

 ゲーム期間は1年。1日単位で進行しますが、イベントが割りとありますし、する事も多いのでそんなに中ダレはありません。
 セーブは20箇所、この手のゲームにしてはちょっと少ないかもしれません。あと、テキストの読み返しは付けて欲しかったです。
 あと、セーブに関してですが、アイテムの製作は一定確率で失敗するのですが、直前セーブ&ロードしても結果がわかりません。他のアイテムに切り替えると成功するときと失敗する時がありますが、成功率の高いものなら成功に変わる事があるようです。どうも、判定時に乱数を作っているのではなく、事前に乱数を作っていて、セーブ時にセーブされているような気がするので、成功率が良くて制作期間が短いアイテムを挟む事で失敗を防ぐ事ができます。
 あまりセーブ&ロードを多様すると面白くもなんともなくなりますし、そんなことをしなくても難易度は低いのですが、重要なイベント関連で期日も迫っている時や非常に貴重なアイテムが失われるような場面で失敗を引いた時には使うのも可かと思われます。

 「発明」は元になるアイテムを「研究」する事で発明品のレシピを得ることができ、さらに「製作」を行うと発明品ができます。完成した発明品は街の商店に卸してもいいですし、次なる発明品の為に「研究」する事もできます。
 どことなくガストのアトリエシリーズに似ているようにも見えますが、実はまるっきり似ていて、本筋とは別にオリハルコンの人造(アトリエシリーズは金の人造)という目的があったりするのまで同じです。
 工房での作業の他、トリスティアの街を移動して材料を仕入れたり商品を卸したりします。移動は移動先を指示する方式で、余計なアニメーションなどは入らないのでイラつく事はありませんが、後半になって店の数が増えてくると、どの店に何を卸したのか把握できなくなってちょっと大変です。でも、あまり気にしなくてもいいようなものなのかもしれません。

 ストーリーは一応山谷あって連続イベントなんかもあるんですが全体的に薄味。
 テクノロジーの発達の負の部分(テクノロジーのリスクや進歩により不利益を被る人たち)を扱ったイベントもあり、それなりに重たい雰囲気を作るのですが、一晩寝るとコロっと忘れるヒロイン&街の住民のせいで何だかなーって印象です。
 また、恩人であるクタニエ司祭の病気イベントは連続イベントで、素材としては相当レベルだと思うのですが、これもあまり引き込まれるものを感じませんでした。イベントの難易度が低すぎるのが原因かもしれません。(自由度の高いシステムなので難易度の調整は難しいでしょうが)
 キャラの方もヒロイン、ヒロインを慕う12才の大富豪一族の娘、15才で港の商会の会長、19才の飲んだ暮れ司祭、謎の古代文明の遺産となかなか凝ってます。それでいて薄味に感じるのは色恋沙汰がないからですかね?

 さて、本作、プレイした限り、いくつか問題点がありました。
 ひとつはストーリー進行に関するもの。展開によってはゲーム途中でラファルーが行方不明になるのですが、なぜか終盤に何事もなかったようにしれっと復帰してしまい、そのまま終盤で重要な役割を演じてしまうという、完全にフラグ制御をミスっているのが一件。
 もうひとつ、CD−ROMをいれずにプログラムを起動させると・・・CD−ROMを入れる事を促すダイアログが出るのですが、イベントの取り方が悪いのでしょう、フォーカスがいったりきたりして全く操作が不能になり、システムがクラッシュします。
 うちの環境に依存する問題かも知れませんが、ウチの環境は自組マシンといはいえ、リファレンスもしくは国内の信用できるメーカー(カノープスとか)で固めてあり、OSも市販ソフトと純正ドライバ以外は常駐しない状態で遊ぶので、あまり環境問題を起こされても困るのですけどね。

 トータルな評価は中の上。普通に遊べる手堅く纏まった作品という事で。でも、最近の工画堂は有名シナリオライターや絵描き、人気声優をもってきて華々しさはありますが、肝心のゲームとしての質はかなり低下している感があります。ゲームとして勝負するしかなった8ビット時代から続く老舗として再起する事を切に望みます。

 お気に入りキャラは・・・ヒロイン、ナノカ・フランカ。いつも前向きで明るい女の子ですが睡眠時間は1日4時間(それもとらない事もある)で濃いコーヒーを好み、研究費や材料費に収入の大半をつぎ込み、食事は道の野草を食べて凌いだりするなどエンジニアスピリッツに溢れる性格も魅力的(笑)


蒼い海のトリスティアと日本海軍

 テンザン。ナノカの祖父の手による戦闘ゴーレム。昔の合体ロボみたいな外見。
 日本海軍の「天山」は三座単発の中島製の艦上攻撃機。九七式艦上攻撃機の後継として昭和16年に試作完成、18年頃から量産が開始され、4型合計で1268機が生産されました。
 速力は481km/hで航続距離は約3000km、搭載量は0.8tです。運動性能も良好な傑作機でしたが、登場した頃には制空権の喪失と米艦の防空火力の強化により航空雷撃そのものが非現実的なものとなりつつあり充分な活躍の場は与えられませんでした。

 この他、日本機ではありませんが、古今東西の軍用機が少々。

 ナノカ・フランカ。物語のヒロイン。前述のとおり、非常に明るくて前向きな14才。
 スホーイ27(Su−27)、NATOコードネーム「フランカ」。1977年初飛行のソ連の全天候制空戦闘機。アビオニクス抜きの純粋な空中戦ではF15を凌ぐとも言われる世界最強の制空戦闘機のひとつです。バリエーションが豊富で艦上型や戦闘爆撃機型もあり、世界初の実用推力偏向戦闘機であるSu−37もSu−27の改良型です。
 速力はマッハ2.35、航続距離は4000km。搭載量は6t。現在はロシア向けは生産されていませんが、中国などに向けての輸出用が生産されています。

 スツーカ。テンザン同様ナノカの祖父の手による狼型の人工生命体。ナノカのお目付け役。
 ユンカース87(Ju87)スツーカ。1935年初飛行のドイツの複座単発の急降下爆撃機。開戦劈頭は無敵の大活躍で独特の降下音は連合国将兵から「悪魔のサイレン」として恐れられ、「急降下爆撃機」を意味するスツーカがそのまま愛称とされました。しかし、空中戦には弱く、制空権が失われた中盤以降は苦戦を強いられます。
 速力は408km/h、航続距離1000km、搭載量は1.4t。

 ネネ・ハンプデン。ナノカを慕って帝都から追いかけてきた大富豪の娘。12才。
 ハンドレーペィジ・ハンプデン。1936年初飛行のイギリス空軍の双発軽爆撃機。名爆撃機ウェリントンと同仕様ですが、全く逆のアプローチで設計されており、細い機体と隙間翼が特徴でした。
 速力409km/h、航続距離3000km、搭載量1.8t。ウェリントンに主役の座は奪われましたが、それでも1432機が生産されました。

 ラファルー。海中から引き上げられた箱の中で眠っていた謎の少女。ナノカを手伝うことに。
 ダッソー・ラファール。ユーロファイター計画を脱退したフランスが独自で開発している次世代機です。空軍のミラージュおよび海軍のクルセイダーの後継の筈ですがシュペルエタンダールのリプレースも計画されているようです。
 速力はマッハ2、航続距離4200km、搭載量は9.5tで巡航ミサイルも積めます。次世代機の例に漏れず開発は遅れ気味です。

 密輸商人ミグおじさん。その名の通り密輸商人。
 ミグはアルムチョフ・ミコヤンとミカエル・グレビッチが創設したソ連のミコヤン・グレビッチ設計局の略称ですが、ソ連時代は戦闘機設計はミグ設計局がほとんど独占していたのでソ連戦闘機の代名詞でもありました。
 ソ連崩壊後はスホーイの台頭と独占の反動でさんざんな目にあっているようです。

 ラプター。ラファルーの台詞にだけ登場するトリスティア(というか、その下にある古代文明の遺産)を守る守護者。
 F−22ラプター。F−15イーグルの後継計画であるATF計画で選定されたロッキード・マーチンの次世代機です。
 速力はマッハ2.0、武装はサイドワインダー4発とアムラーム6発(さらに外部に4発搭載可能)。

 ベルクトゥー。同じくラファルーの台詞にだけ登場する守護者。
 S−37ベルクトー。スホーイが自主開発した前進翼を採用した次世代戦闘機。ロシア軍の正規の開発計画ではなく、あくまで自主開発による技術試験機ですが、ロシア空軍は頓挫したMFI計画(MiG−1.44)に代わる次世代機開発計画をスホーイに発注したと言われており、本機が収集したデータを元に新型機が開発されるようです。
 なお、名称はスホーイ内部のコードネームであって、おなじみのNATOコードネームではないので、頭文字がBだから爆撃機という訳ではありません。

 グリーペン。同じくラファルーの台詞にだけ登場する守護者。
 サーブJAS39グリペン。スゥエーデンが国を挙げて国産した現世代戦闘機。アメリカ機やロシア機のような派手さはありませんが、比較的安価で戦闘、爆撃、偵察などどんな任務もそつなくこなし、高速道路に発着可能、分解・整備も容易とスゥエーデンの国情にマッチした優れた戦闘機として知られています。
 速力はマッハ2.2、航続距離1800km、搭載量は5t。

 ブレニム。レストラン「ハンプデンズ」を建設中の人がハンプデンズの名前を思い出せなくて出した名前。
 ブリストル・ブレニム。1936年初飛行のイギリスの軽爆撃機。高速偵察機を改造した機体ですが、運動性が特に優れており、レーダーを搭載して夜間戦闘機としても使用されました。
 速力は418km/h、航続距離1800km、搭載量0.6t。

 モスキート。同じくハンプデンズの名前を思い出せなくて出した名前。
 デハビランド・モスキート。1940年初飛行のイギリスの軽爆撃機。ベニア板と接着剤でできている一見とんでも機ですが、並の戦闘機では追いつけない612km/hの高速とレーダーに映りくい特性、優れた復旧性をいかし、日本やドイツをさんざんに苦しめた第二次世界大戦における最良の軽爆撃機のひとつです。
 航続距離2000km、搭載量0.9t。

 ついでに、トリスティアのある世界はフルクラム帝国という名前のようです。
 ミコヤン・グレビッチ29(MiG−29)、NATOコードネーム「フルクラム」。1977年初飛行のソ連の全天候制空戦闘機。アルチョム・ミコヤンの手によらない最初のMiG戦闘機でSu−27と同期ですが一回り小柄で局地防空を主眼に設計されています。F16やミラージュ2000等に比べて非常に安価な事から旧共産圏や第三国で多く使用されていますが、ロシアにおけるミグの政治的地位の失墜などにより改良や後継の開発は難航しているようです。

 この他、フォーリィ→フュアリーなんてのはツライですかね? 他にもいろいろありそうですが、私、あんまり飛行機には詳しくないから見落としていると思います。

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