ONE2
 ONE2

  BASE SON 定価:8800円  発売:2002年4月
永遠の世界っすから。乃逢シナリオは足の怪我が基本アイテムです。

 BASE SON処女作ですが、同系列(ネクストン系列)のソフトハウスTacticsの大ヒットしてPSにも移植された「ONE〜輝く季節へ〜」の続編。

 しかし、ONEの主要スタッフはTacticsを抜けてkeyを設立しちゃっている事はご承知のとおりで、全くの別スタッフで開発されるという、「大人の事情」が大炸裂なバックグランドを持ちます。
 ONEは本質として哲学的というか抽象的というか、解釈が難しく、最終的にプレイヤーに解釈を投げている所があり、オリジナルのスタッフで続編を作っても「こんなのONEじゃねえ!」と物議を醸すのは避けらない部分があるのを、全く別のスタッフが挑むのですから大変です。
 ジリ貧の中で実施された全盛期でも成功が難しい過去の遺産(実体なし)にすがった思いつきのような起死回生の計画、原画屋の公募、あげくに開発中のスタッフ更迭・・・・インパール作戦ですかぁ?

※インパール作戦※
 昭和19年に日本軍とインド国民軍(自由インド政府)が共同で実施したインド侵攻作戦。満州事変やマレー作戦同様、敵の混乱に乗じて一気呵成に進軍するという日本式電撃作戦(戦車無しの電撃作戦)であったが、途中に大山脈や大河があり、進軍だけで犠牲者が続出、戦車や野砲はもちろん、食料や山砲の輸送もできず、携行食糧と携行火器のみで戦車や飛行機まで有し、完備した陣地で待ち受ける英軍に突っ込むという、かなり無謀なものだった。
 それでも一時は宮崎支隊などの超人的な活躍でインパールの北のコヒマまで進出するが補給が全く無く遂には敗走、ビルマからインパールへ続く道は英軍の追撃により倒れた兵や戦病死や餓死した兵で溢れ白骨街道と呼ばれる程の大敗北を喫し、策源地のビルマも失う事になった。(参加将兵12万、うち戦死3万、戦病死4万)
 補給と敵戦力を軽視し歩兵突撃を過大評価するなどいかにも日本的な油断の目立つ上に作戦中に司令部と前線の師団で意見が対立、3人の師団長全員が解任(1人は病気理由)されるなど混乱が続き「勝てたら世界の七不思議」になりそうなひどい状況で「大東亜戦争3バカ作戦」のひとつに上げられる事も多いが、インド人(少なくともその一部)は日本が祖国を解放しようとして血を流したとしてこの作戦に感謝しているらしく、戦後、「(別にインパール作戦はインド人の為にやった訳ではないので)そこまで言われるとなんだか悪い気がする」ぐらいの謝辞が贈られたりしている。

 そんな状況でしたから、インパール作戦並の敗北は確実視されていましたが・・・充分以上の出来、「さあデリーに進軍だ!」とまではいかなくても、インパールを押さえてビルマの防衛を強化するという目的を達するぐらいはできていました。宮崎少将(陸軍が誇る不敗の魔術師)ならぬ青山氏の早期投入が戦況を救ったのでしょうか?

 ストーリーは恋愛物の王道、「とある街に引っ越してきた主人公がそこで女の子と出会って仲良くなる話」。普通じゃないのでは「永遠の世界」が絡んでくる事です。

 ヒロインは全部で5人。面倒見がよくて他人の頼みを断れない小菅奈穂、浮世場慣れした無愛想系の望月綾芽、陸上部に属する元気系後輩の香咲乃逢、副担任で音楽教師の深月逢、通学路で出会う謎の少女、芹沢心音。「ロングヘアの先輩」は居ないですが、まあ、基本的なところ。ややこしい経過の名残か、初期の頃に発表されていたキャラとは絵が随分違いますし、居なくなったキャラや増えてるキャラもいます。

 中身は「永遠の世界」が出てくる所までは普通の学園物、「永遠の世界」については前作が全キャラとも、主人公が永遠の世界に行って1年後に帰って来る話でしたが、本作では前作型が3人、随分前に行ってしまっていてイリーガルな帰り方をするのが1人、行く 直前に引っ張り戻されるのが1人と形式を保ちつつバリエーションを出しています。
 一応、前作エピソードが語られたりもするのですが、法律的にはともかく、文芸的には正統な続編ではない事が影響しているのか、前作を強く意識しながらも、それにべったりになったり引きずられたりすることなく、一定の距離を置いて、それでも取り入れる所をとりいれて巧いこと作っており、麻枝氏や久弥氏が作るよりも上手くいったのではないかと思える部分もあります。

 CGは瞳などの描き方に若干の癖がありますが緻密な絵柄です。あっさり風のアニメ絵になれた私には少々描き込み過多に思えなくもないですが、うざいという程でもありません。
 しかし、青山氏って瞳の描き方が特徴的な原画屋に当たる事が多いですね・・

 私的評価は・・上の下。スタッフ交代の影響か、いまひとつぎこちない部分やまとまりの悪い部分がありますが、ONE2として充分なレベルに達していると思います。
 しかし、追加投入されたシナリオの青山氏は私的には本邦有数のシナリオ書きだと思うのですが、あんまり報われて無い人ですよねぇ・・・・まあ、萌えを前面に出す人じゃないから、今の時勢ではブレイクは難しいかもしれないけど、もうちょっと評価されていい人だと思うのですが・・・

 お気に入りは・・望月綾芽。無愛想系の女の子が次第に心を許していくってのはお約束。基本的に媚びる要素の少ない本作では、貴重な存在。なお、彼女のシナリオは「おとぎ話」としてですが、唯一、直接的に前作が継承されています。
 次点は元気系後輩の香咲乃逢。彼女は永遠の世界に旅立つ直前にひっぱり戻されるという、面白いパターンです。


ONE2と日本海軍

 望月綾芽。前述のとおり無愛想系。過去に姉が永遠の世界にいっており、そういう意味では前作の茜に近いスタンスにあるといえます。
 日本海軍の<望月>は睦月型駆逐艦の11番艦。睦月型は大正末期に建造された駆逐艦で、艦首ウェルデッキや高い位置の砲など、系列的には峯風系統に属しますが、魚雷を61センチ(まだ酸素魚雷ではない)として攻撃力の増強が図り、艦首をスプーンバウからダブルカーブドバウに変更、フレアを大きくするなど後の駆逐艦に続く改定がなされています。
 睦月型は12隻が建造されており、月名で綺麗に決まりそうですが、葉月、神無月、霜月、師走が欠け、代わりに菊月、三日月、望月、夕月が入っています。
 まあ、駆逐艦<師走>では落ち着きませんし、<神無月>も神も仏も無いみたいであんまりいい響きじゃありませんが、葉月と霜月は何で欠けてるんでしょうね?

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