Close to 〜祈りの丘〜
 Close to 〜祈りの丘〜

  KID 定価:6800円  発売:2001年4月

 KIDのドリームキャスト版恋愛AVG。
 KIDといえば、「メモリーズオフ」「インフィニティ」「夢のつばさ」「てんたま」と良質の作品を続けて出しており、「輝く季節へ」は忘れてあげていい頃かもしれません。

 主人公は幼なじみで恋人の遊那とデート中、交通事故にあい幽体離脱をしてしまう。元に戻るには自分の事を強く想ってくれる人が必要という事になりますが、ほとんどの人には霊体である主人公は見えないし、肝心の遊那に至っては事故のショックで主人公の事を忘れてしまっている・・そこで、主人公は遊那の記憶を取り戻そうとする・・というお話。
 これだけでもリーチ型の死にゲーですが、後置要素を持つシナリオも複数ある多段多重死にゲーとなっています。

 ヒロインは恋人の遊那、友達の翔子、霊感があって主人公を見る事ができる2つ年下の小雪、同じく主人公を見る事ができる小学生の麻衣の4人。それぞれのストーリーは決して長くはなく、イベントも少ない部類に入るのですが、オリジナル作品のほぼ全てが死にゲーなKIDだけに話の運び方が巧く、ストーリー間の伏線が非常に巧いこと張られている良質のシナリオです。
 また、どのストーリーも「痛い」。伏線の持ち合いが巧いので「幸せの総数が足りない」(誰とくっついても、誰かが不幸になる)というだけでも痛いのに、各キャラに極限してもオチで手放しで「よかったよかった」で済ませられるのは遊那EDぐらいで、他は苦しかったり、綺麗だけど哀しかったりと相当なもんです。

 ゲームはAVG+「ルームパート」。この「ルームパート」は遊那の部屋に入り込んで部屋の中を調べたり、念力で物を動かしたり、遊那の注意を引きつけたりして遊那が記憶を取り戻すように働きかけます。
 主人公が「霊体」で他人からは見えないという設定を活かした面白い仕掛けですが、若干テンポが悪く、また遊那シナリオ以外では巧く活きていない(キャラによってはフラグになってたりはする)のはちょっと残念です。

 AVGパートの方はマップ移動と選択肢型の組み合わせ。マップ移動の方は全移動可能地点から選ぶのではなく、必要に応じて2,3個の移動先から選ぶ方式で、移動先の絵が表示されるので、どのキャラがいるのかわかる事もありますが、表示されていない事もあるので要注意です。
 選択肢型の部分はKIDスタンダート。既読スキップやオートプレイもありますし、セーブ/ロード画面ではゲーム中日時やサムネイルも表示される親切設計。難点を挙げるなら、読み返し機能がルームパートなどで分断されてしまい、あまり深くは読み返せない点ぐらいでしょうか。

 ゲームとしての難易度はやや低い目。常識的な選択で特に問題はないですし、選択肢の数自体が少ないので悩む事は少ないと思います。ただ、ルームパートのフラグ探しは勝手が違う事もあって少々難しいかもしれず、遊那狙いが翔子に流れたり、小雪のトゥルーが見つからないという事はあるかもしれません。

 CGはごとPさんのたいそう可愛らしい絵で文句無し。ただ、ドリームキャストとしては大画面にしたときに、ちょっと画質が眠たくなるような気がするのですが、まあ、これはごとPさんの絵の性質のせいなんでしょう。

 私的評価は・・・「名作」(上の中)。ボリュームの少なさと、それに伴うシナリオの若干の無理は減点対象ですが、それ以外は全く問題なし。いわゆる萌え要素(ギャルゲー要素)とストーリーが極めて高い水準で共存しており、両者のバランスという点では過去のKIDの作品で間違い無く最良であるといえます。

 お気に入りは・・・みんないい子で甲乙付けがたいのだけど、1人あげるとすると遊那かなぁ。校内で1・2を争う美少女だけど、ほわほわした言動で周囲を和ます天然少女、とありますが、ルームパートでの言動なんぞみていると、「天然」を通り越えて「電波」の領域に入りつつあるような気もします。
 なにしろ、主人公の事を忘れていますから、他のキャラに比べて「主人公との距離」では不利になっているのですが、OPのラブラブぶりや、後半の追い込みが効きましたが、実際は、このゲームで「痛くないED」は彼女だけというのも効いているのかもしれません。(私は本来、悲劇でも綺麗に決まればOKの筈ですが、精神状態によっては完全無欠のハッピーEDを欲する事があるようで、このゲームのプレイ時もそういう状態だったようです)

Close toと日本海軍

 橘小雪。無口な奴担当。「霊」が見えるが為に疎外されており、心を閉ざしている少女です。無愛想系のキャラが次第に心を開くというのは萌えますが、彼女のシナリオは若干、展開が急すぎて無理があるようにも思えました。
 実は重い病気で移植が必要。移植といえば加奈とかみなもなんて前例がありますが、彼女の場合は物が物だけに痛い話です。

 日本海軍の<橘>は2隻あり、初代は最初の二等駆逐艦である櫻型の2番艦、二代目は日本海軍最後の駆逐艦である橘型(丁改型)のネームシップです。
 2代目<橘>は昭和20年1月20日、横須賀海軍工廠で竣工。戦時量産型である松型駆逐艦の改良型で、高張力鋼の全廃、フレアを含めた曲線部の徹底した排除、トランサムスターンの採用など、性能低下を偲んで更なる生産性向上を図っていますが、出来て見ると危惧された性能低下は殆ど無く、新型の水測装置や対空戦闘力の強化により却って有力な艦となりました。
 完成後は瀬戸内海で慣熟訓練の後、5月22日より津軽海峡方面の対潜哨戒・護衛任務につきますが、7月14日、日本海航路の船団護衛中に函館湾で青函連絡船に対する空襲に巻き込まる形で半年に満たない生涯を閉じました。

橘
            橘型駆逐艦<橘>

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