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輸送艦とは


 輸送艦とは、敵勢力圏下への強行輸送・揚陸作戦用に開発された艦種である。
 名前のイメージから、物資運搬の為の支援型の船舶を思いうかべる向きもあるが、駆逐艦や潜水艦同様、艦艇に分類された純然たる戦闘艦艇である。

 直訳で「Transport」とする事もあるが、これでは<宗谷>や<間宮>など、特務艦である「運送艦」と区別ができなくなってしまうので、「Landing Ship」と訳すべきであろう。(海上自衛隊の「輸送艦」は「Tank Landing Ship」または「Landing Ship Utility」である。)
 また、二等輸送艦は「SB艇(D)」または「SB艇(T)」と略す事がある。
 末尾のDとTはディーゼルとタービンで問題無いが、問題は「SB」。Landing Shipにしろ、Transportにしろ、略語になっていない。
 SS艇(陸軍の上陸用の小型舟艇)の海軍版(B)でSBとか、戦車母艇(Sensya Botei)でSBとか諸説あるがはっきりしていない。

 昭和17年よりガダルカナルを始めとする敵勢力圏への物資輸送に投入した船舶の損害にネを上げて駆逐艦や潜水艦によるネズミ輸送を開始したが、駆逐艦などでは輸送できる物資の量には限りがある為、昭和18年4月、専用の輸送艦の開発が開始された。

 第1号型は空母や艦隊駆逐艦と同じ巡航速力18ノットという高速と12.7センチ連装高角砲と25ミリ機銃15丁という重武装を活かして敵勢力圏に突入、艦を停止させる事なく艦尾のスリップ・ウェイより運貨船を発進さる、「強行輸送艦」であった。

 第1号の計画中、戦車輸送の要求があり、第1号型への戦車輸送機能の付加も検討されたが、新艦種を建造したほうが効率が良いという事になり、「小発」の拡大型ともいえる第101号型が計画された。
 また、101号型の主機をタービンに換装した第103号型も建造された。

 日本海軍の分類では、「艦艇」の中の「輸送艦」で、排水量1000t以上、すなわち第1号型を「一等輸送艦」、1000t未満、すなわち第101号型と第103号型を「二等輸送艦」としている。