中華民国(巡洋艦・駆逐艦）

　中国は清時代末期に近代海軍を図るものの日清戦争で壊滅、その後は内戦や小競り合いで弱体化の一途をたどっていたが、これを打開すべく民国１６年（昭和２年）、空母１隻、重巡２隻、軽巡２隻、駆逐艦２８隻、潜水艦２４隻、その他１０６隻を建造する壮大な海軍建設１０年計画がスタートした。
　もちろん、ソ連には叩かれるわ、日本に満州地方は持っていかれるわ、共産勢力や地方の軍閥は割拠するわ、政府内部のゴタゴタが絶えないわの民国にこんな大計画を遂行する国力がある筈もなく、数度の計画改定の末、１０年間でどうにか巡洋艦３隻、砲艦１７隻を完成させた。
　計画には国内の造船所整備も含まれており、上海の江南造船所が整備され、巡洋艦の最初の一隻、＜�ｨ海＞以外の国産に成功している。
　その後、日中戦争で海軍は再び壊滅するが、戦後は大陸にあった日本軍艦艇を捕獲、また賠償として残存戦闘艦艇を受け取っている。

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�ｨ海　-NingHai-

　日本海軍の指導の元で播磨造船所が建造した艦。一応、小型巡洋艦という事になっているが、極端な重武装な上に装甲まで施されており、外洋で使用するにはあまりにもバランスが悪く、長江や沿岸での使用を前提とした巨大砲艦というのが近い。
　民国２１年（昭和７年）７月３１日竣工、９月１日に民国海軍に編入され、民国海軍の主力となった。
　第二次上海事変勃発直後の民国２６年(昭和１２年）９月、長江所在の日本艦艇・商船の一挙殲滅を狙い江陰水道の封鎖を図るが機密が漏れて失敗、日本機の猛攻を受け９月２４日に大破座礁・放棄された。
　その後、日本軍が捕獲。内地に回航して修理を行い海防艦兼練習船とする予定だったが太平洋戦争勃発などの為に放置され相生港で宿舎船として使用されていた。
　その後、戦局の悪化で護衛艦艇および輸送船が不足した為に昭和１９年６月、海防艦兼輸送船に改造、＜五百島＞と改名された。
　さらに昭和１９年９月２５日には二等巡洋艦に転籍となる予定だったが、９月１９日、御前崎沖で米潜の雷撃をうけ沈没した。

　基準排水量２５２６トン／垂線間長１０６．７ｍ／レシプロ９５００馬力／速力２２ノット
　兵装：１４ｃｍ連装砲３基　７．６センチ単装高角砲６基　５３センチ魚雷発射管連装２基　航空機２機（射出機なし）

　準同型艦：平海（建造は中国・江南造船所）

　※中国側の記録では�ｨ海も国産という事になっているものが多いが、公正にみて日本製である事は間違いないと思われる※

丹陽　-DanYang-

　元日本海軍・陽炎型駆逐艦＜雪風＞。陽炎型駆逐艦で唯一戦争を生き延びた「奇跡の駆逐艦」として有名。
　特別復員船として復員業務に就いた後、１９４７年７月に賠償艦として民国に引渡され民国艦隊の旗艦となる。
　台湾脱出にも成功し１９６６年に除籍されるまで活躍した。退役後、日本側から返還運動が起きるがその最中の１９７１年に座礁事故を起こして解体、主錨と舵輪のみが返還され江田島の海上自衛隊第一術科学校に保存されている。（他にスクリューと艦鐘が台湾で保存されているらしい）

　基準排水量２０００トン／全長　１１８．５ｍ／ギヤードタービン５２０００馬力／速力３５ノット
　兵装：５インチ両用砲３門　３インチ両用砲２門　４０ミリ機銃１０門

衡陽　-HengYang-

　元日本海軍・松型駆逐艦＜楓＞。松型は戦時量産艦型ながら戦訓を活かした極めて実戦的な艦であった。
　昭和１９年１０月に竣工した＜楓＞は台湾・フィリピン方面で船団護衛や輸送作戦などに従事、終戦後は復員業務に就いた後、１９４７年７月に賠償艦として民国に引き渡され＜衡陽＞、同じく松型の＜杉＞は＜恵陽＞となった。
　＜恵陽＞は内戦中の１９４９年５月、上海付近で座礁・放棄され５１年に解体となった。
　＜衡陽＞は練習艦隊（訓練艦隊）に属するも、正規に武装して就役する事無く１９６０年に除籍・解体となった。

　基準排水量１２６２トン／全長　１００ｍ／ギヤードタービン１９０００馬力／速力２７．８ノット
　兵装：不明（おそらく無し）
　同型艦：恵陽（杉）

信陽　-XinYang-

　元日本海軍・橘型駆逐艦＜初梅＞。橘型は戦時量産型の松型を更に簡略化したタイプで日本駆逐艦の最終シリーズである。とにかく生産性を重視した直線の多い無骨な艦で設計側は不満だったようだが現実に即した性能で現場の評価は悪くはなかった。
　＜初梅＞は昭和２０年６月１８日竣工。竣工直後に本土決戦に注力する為に未成艦の建造が中止された為、日本海軍で最後に竣工した駆逐艦となった。
　戦後は復員輸送に従事、１９４７年に賠償艦として民国に引き渡され＜信陽＞となり、同じく橘型の＜蔦＞は＜華陽＞となった。
　ともに内戦の難は逃れるが＜華陽＞は武装して就役する事無く１９５０年に除籍・解体。
　＜信陽＞は状態が良かったのか内戦で活躍、台湾に渡った後も現役を続け１９５５年に護衛艦に転籍、１９６１年１２月に除籍・解体となった。

　基準排水量１２８９トン／全長　１００ｍ／ギヤードタービン１９０００馬力／速力２７．３ノット
　兵装：５インチ砲２門　４０ミリ機銃７門　２０ミリ機銃６門（信陽）
　同型艦：華陽（蔦）

汾陽　-FengYan-

　元日本海軍・秋月型駆逐艦＜宵月＞。秋月型は日本海軍最大の駆逐艦で長１０センチ砲８門という強力な対空武装を持つ空母直援用の「防空駆逐艦」であった。
　＜宵月＞は昭和２０年１月３１日竣工。昭和２０年６月に対馬海峡護衛中に触雷、さらに修理中に呉大空襲に遭うがいずれも大過を免れた。
　戦後は復員輸送に従事、１９４７年に賠償艦として民国に引き渡され＜汾陽＞となった。
　状態が悪く青島で半ば放置されていたが１９４９年の台湾脱出には成功。日本人技師を招聘して修理を行ったが本復には至らず１９６２年頃に解体された。

　基準排水量２７０１トン／全長　１３４ｍ／ギヤードタービン５２０００馬力／速力３３ノット
　兵装：不明（おそらく無し）

瀋陽　-ShenYan-

　元日本海軍・峯風型駆逐艦＜波風＞。峯風型はイギリス式の設計から脱却したエポックメイキング的なシリーズである。
　波風は峯風型の１１番艦で大正１１年１１月１１日という少々出来過ぎのような日に竣工した。長らく北洋警備につき、太平洋戦争でも主に千島・アリューシャン方面で活躍するど妙に北に縁があった。昭和２０年には損傷修理のついでに回天搭載艦に改造され、そのまま終戦を迎えた。
　戦後は復員輸送に従事、１９４７年に賠償艦として民国に引き渡され＜瀋陽＞となったが、状態が悪く半ば放置されていた。
　１９４９年２月、台湾脱出には成功したが、その後の使い道はなく１９６０年に解体された。

　基準排水量１２１５トン／全長　１０２ｍ／ギヤードタービン２２０００馬力（減缶）／速力２８ノット（減缶）
　兵装：不明（おそらく無し）